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あの日、図書室で言い合いになってから、ミナトとは一度も連絡を取っていなかった。
スマホの画面を見つめては溜息をつく毎日。気づけば街は夏祭りムード一色で、今夜は大きな花火大会がある。
キララ:「(鏡の前で浴衣を整えながら)……結局、誘えなかったな」
一人で家を出て、人混みを避けるように神社の裏山へ向かった。ここは子供の頃、ミナトとよく遊んだ秘密の場所。ここからなら、会場まで行かなくても花火がよく見える。
長い階段を登りきると、そこには見覚えのある背中があった。
キララ:「(息を呑んで)……あ。……ミナト?」
ミナト:「(振り返って、少し驚いた顔で)……キララ。……来ると思ってた」
ミナトはいつものジャージじゃなくて、甚平を着ていた。足元にはラムネの瓶が二つ。
キララ:「(俯いて)……前のときは、ごめん。私、意地張っちゃって」
ミナト:「(頭をかきながら)俺も悪かったよ。お前が頑張ろうとしてるのに、あんなこと言って。……本当は、ただ怖かっただけなんだよ。お前がいなくなるのが」
その時、夜空に大きな音が響いた。
ドンッ! と空が震えて、金色の光が二人の頭上いっぱいに広がる。
ミナト:「(花火を見上げて)…すげぇ」
キララ:「うん。…綺麗だね」
しばらくの間、二人は何も言わずに花火を見上げていた。色とりどりの光が夜空に咲いては消えていく。
ミナト:「なあ、キララ。…お前がいなくなっても、俺たちが友達なのは変わらないよな?」
キララ:「もちろん!何があっても、ミナトは大切な友達だよ」
ミナト:「そっか…よかった」
キララ:「(くすっと笑って)心配だったの?」
ミナト:「まあな。…でも、安心した。俺、絶対練習頑張るから。次にお前に会う時までには、もっと上手くなってる!」
キララ:「うん!私も新しい場所で頑張るね!また一緒に遊ぼうね、ミナト!」
二人は顔を見合わせて笑った。大きな花火が次々と上がって、二人の顔を赤や青に染めていく。さっきまでの不安が嘘みたいに消えて、二人はただ、目の前の美しい光景を心に刻もうと思った。
つづく