「主様、そろそろ着くぞ」
あれから数時間が経ち、馬車に揺られながら皆と話していると、前の方からボスキの声がしてきた。それから約10分後、馬車の速度がだんだん緩くなっていき、漸く目的地へと到着した。
「主様、お手を」
「ありがとう。ユーハン」
「いえ。足元に気を付けて下さいね」
差し出されたユーハンの手に自分の手を乗せ、軽く握る。支えてもらいながら馬車を降り、依頼主の元へ向かう。
「ああ、良く来てくれた。遠かったろう、すまないね。こちらも慌てて居てね。私はここの主である○○だ。宜しく頼むよ」
「こちらこそ宜しくお願い致します」
「かしこまらなくていい、私はそういうのが苦手でね。フランクに行こうでは無いか。それで、君達にお願いしたいことなんだが、部屋周辺の警備をしてほしいんだ。その部屋には私の妻が居てね…必ず守ってやって欲しいんだ」
「お任せ下さい。その為にここへ来ましたから」
「君達の強さはフェンレイ様からよく聞いている。信頼しているよ」
ここまで物腰柔らかな貴族は珍しい。ミヤジから聞くには結構位の高い人であると言うのに高圧的でもない。好感を持てる人だ。屋敷の中に入れてもらい、部屋へ案内される。
「ここだよ。ラムリくん、ボスキくん、ミヤジくん、ラトくん、ロノくんの5人はここで妻を守っていてくれるかな?ミヤジくんとラトくんは外で窓の下の警備を頼むよ。ラトくんはミヤジくんの近くに居てくれ。夜は室内でラムリくんとボスキくんと交代してくれ」
「おや、それは何故でしょう?」
「私は情報を大切にしていてね、必ず調査をさせているんだよ。と言っても街中くらいでしかデータは取れなかったが、君達が優しい事はわかった。ラトくんはミヤジくんのいうことを聞いているし、ラムリくんは夜の方が好きなのだろう?」
「リサーチ済みと。それは分かったんですが、私達は何を…?」
「その他の3名と悪魔執事の主は事件の真相を暴いて欲しい。原因が分からない限り対処のしょうがないのでね」
「わかりました」
当主から言われた通りに5:3で別れ、私達は事件が起こった現場に向かった。事件が起こったのは、本邸とは別にある召使いの家だった。事件日の詳細は、当主から渡された紙に書き記されていた。皆に分かるように、声を出して読み上げる
「“子供が木箱を持ち込んだ次の日から亡くなるメイドが続出した。木箱は複雑な作りをしていて、ちょっとしたからくりのようだった。子供が興味を引くようなそれは、××家の遣いの物から送られた。その木箱が原因かは不明”……って、これ………」
「話を聞くにその木箱が原因らしいな。なんらかの菌でもはいっていたとかか?」
「その可能性があるから今は閉鎖状態にしているよ。これ以上被害を出す訳には行かないからね…。けど、不思議なのは男は一切亡くなっていないということだ」
「………………」
「主様?どうかなさいました?もしかして、具合でも悪いんですか?」
「違うよ、フェネス。大丈夫。あの、ご当主様…私、何故この事件が起こったのかわかりました」
「本当かい!?」
「ええ。詳細を見るに、これはコトリバコのせいです」
「コトリバコ…?主様、それはなんですか?」
「…呪い、って言ったら信じますか?」
「魔女がいるくらいだからね、信じるよ」
「わかりました……コトリバコとは、子をとる箱と書いてコトリバコと読みます__」
私の世界で有名なコトリバコ。ネットの掲示板に書き込まれ、それから怖い話として日本に広まった、恐ろしい箱。一通り説明し終えた。コトリバコとなるとすぐに処理しなければならなくなり、私は持ってきたお札等を用意する。
「主様!それなら主様も危ないのでは?!」
「大丈夫。私は“人間じゃない”から」
「えっ…?」
「主様、それはどういう_」
「とにかく、私は大丈夫。昔やったことあるし。ユーハン達はここで待ってて」
「主様に危険が及ぶかもしれません、それは私には出来ないことでしょうか?」
「ユーハン、気持ちは嬉しいけどそういうこと言ってる場合じゃないの。ユーハン達が私の事大切にしてくれてるのは分かってる。だから、約束する。私は死なない、怪我もしない。ね?」
「……っ、わかりました。ただ、5分以上戻らないようであれば私もそちらに向かいます」
「俺とフェネスも行きます。どうか、無理はしないでください…」
「うん、約束。じゃ、行ってくるね」
中に入ると、外からでも感じた禍々しいオーラが更に増し、肌がヒリヒリする程の強い気配を感じる。これは八人は入ってるな。コトリバコってだけでもヤバいのに、なんでハッカイ送り付けたんだよ。 これ、普通の人だったら祓うの無理だぞ。
「……ま、普通の人なら、だけど」
「そんじゃまあ、食事の時間だよ」
私の呼び掛けに応じる様に、私の中にいる“バケモノ”が、起き上がった
「…………ゴちソウサマ。」
「…チッ……なンだ、こコ二かがミァったのカよ」
壁に固定された鏡が映すのは、開いた口から見える白く尖った牙はおおよそ人とは思えないほど鋭く、前髪をわけて額から伸びた1本の角を持ち、白いはずの強膜が黒色に染まった、“バケモノ”__ではなく、鏡の前の何の変哲もない壁だった
「ダカラきらイナんダ」
「ニンゲんジャないッテわカルかラ」
苛立ちのまま拳を鏡にぶつけ、強い衝撃に耐えきれなくなり、蜘蛛の巣にヒビがはいったその鏡はもう正常に映すことはなかった
コメント
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コトリバコ、面白いよね
コトリバコか、知ってる!
ですよね!コトリバコ予想が当たりました♪でも夢主さん女性… 霊能力者は例外かな?いいか別に( *¯ ³¯*)取り敢えずこの作品は神ってるってことでOKね?