テラーノベル
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エカテリーナ自身が無事でいる保証はない。
だが、もう迷っている暇はない。
「エカテリーナ……ッ、戻ってきてください……」
私はエカテリーナの唇に自分の唇を重ねた。
互いの魂を繋げるための行為。
二人の境界が溶け合うような錯覚。
瞬間、エカテリーナの目から涙があふれた。
「アル……ベ…ル……ト…」
掠れた声で名前を呼ばれた瞬間──
彼女の体内で蠢いていた”コード”が露わになった。
(…っ!今だ)
私は渾身の魔力で”コード”に触れ──
彼女を蝕んでいた異質な力が弾ける。
眩い光と共にエカテリーナの体が崩れ落ちた。
「っ!」
慌てて受け止めようと伸ばした腕の中で彼女が弱々しく息をつく。
「ぅ……あ…」
焦点の合わない瞳が徐々に潤みだし──
「……っ…!」
突然の嗚咽と共に私にしがみついた。
「ごめん……ごめんアルベルト……!私……自分が自分じゃなくなってて……っ」
泣きじゃくる彼女の体温を感じながら安堵の吐息を漏らす。
(成功した……彼女を取り戻せた……)
ほっとしたのも束の間──
「……ふむ、中々面白い」
背後から聞こえた冷たい声。
「私のユニーク魔法を破るとは、流石だな。アルベルト。だがこれ以上の茶番は必要ない」
振り向くと、すでに白翼の男が再び戦闘態勢に入ったのか──
「!?」
その瞬間、視界に閃光が走った。
(速すぎる……!)
思考する暇すらなかった。
MASTERの指先から放たれた一条の光が、エカテリーナを直撃せんと迫っていた。
反射的に足が動く。
「エカテリーナッ!」
叫びながら彼女に飛びかかり、小さな身体を包み込むように覆いかぶさった。
次の瞬間──
「ぐあっ……!」
熱と痛みが背中から脳天までを貫いた。
視界が歪み、息が詰まる。
しかしエカテリーナの体温だけは確かだった。
「アルベルトッ!!な、なんで…っ、そんなことしたらアルベルトが…っ!!」
彼女の悲鳴が耳元で弾けた。
肩越しに見える青ざめた顔。
その瞳には涙が溜まっていた。
「……言ったで…しょう。私は…貴方の「盾」だと…っ」
声が出たのは奇跡に近い。
喉から鉄錆の匂いがした。
それでもなお言葉を紡ぐ。
「エカテリーナ、無事で……よかった……」
私の背中が焼けるように熱い。
おそらく重傷だろう。
それでも彼女を守れた事実は変わらない。
彼女の柔らかな髪が頬をくすぐり、微かに震える息遣いを感じる。
「いやっ…死なないで…っ、アルベルト…私なんか守らないで……!」
彼女が絞り出すような声で訴えてくる。
私は最後の力を振り絞り微笑んで見せた。