テラーノベル
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朝の挨拶を交わしながら、校舎へ向かう女学生達の姿が見えた。
櫻子は、緊張から顔をひきつらせる。
金原は、色々気遣ってくれるが、果たして、言うように大丈夫なのだろうか。
本当に授業について行けるのだろうか──。
「恐ろしいか?」
金原が、櫻子の耳元で囁く。
「い、いえ!そんなことは!」
心配をかけまいとして、櫻子は、とっさに答えたが、ふふっと、金原に笑われた。
「お前は、嘘をつくのが下手だなぁ」
言って、ペシンと、櫻子の額を金原は指で弾く。
「い、痛い!だ、旦那様っ!!」
「痛かったか?」
金原は、更に笑うと、櫻子の
額にそっと口づけた。
「……まじないだ」
「!!」
たちまち櫻子の顔は赤くなる。それを見越したかのように、金原が、ぐっと抱き寄せた。
「落ちるだろう。危ないぞ」
金原が、意地悪く口角を上げているということは、完全にからかいなのだが、確かに、櫻子は距離を取ろうとして体が一瞬揺れた。まあ、落ちるかもしれないと言えばそうなのだろうけれど、とにかく、力強く抱き締められて、櫻子は、その腕から逃げることもままならない状態で、金原の胸に頬を寄せるしかなかった。
「社長ーー!いつまで、いちゃついてるんっすか?!」
虎が、前を向きながら言う。
「うるせぇ、お前は、黙って走っておけ!」
金原は、照れ隠しをかねて、虎を叱りつける。が。
虎も負けてはいなかった。
「でも、とっくの昔に、女学校の正門に来てるっす!これ以上走れないっすよ?!」
「え?!」
「いつまでもチュッチュッやってる場合じゃないっすよ!往来に、人が乗ったまま、人力車停めておくのも限界っす!」
確かに。人力車に乗ったまま、抱き合う男女の姿に、何事かと、通り過ぎる人々は眉をひそめ、女学生達は、含み笑いしながら、通り過ぎている。
「な、なんですかっ!ハレンチなっ!」
そこへ、耳を覆いたくなる、女の金切り声が響き渡った。
「いや、まあ、それは、山谷先生。ここは、ひとつ……」
金原と櫻子達の所業を庇う、おろおろとした男の声が、金切り声の後を追う。
「い、いやー、金原社長、お待ちしておりました!」
正門の前には、これでもかと腹をつき出す、小太りの洋装姿の老齢の男と、袴姿の白髪混じりの女が、立っていた。
「お出迎えをと思いまして……」
ははは、と、空々しく笑い、やたらと腰の低い態度で、男は金原へ接して来た。
「おや、これは、校長。わざわざすみませんなぁ」
虎に降りる準備をしろと言い付けながら、金原は、相も変わらず、櫻子を離そうとしない。
「見せつけてやるか?」
などと、余裕を見せている。
「だ、旦那様!」
校長、と、金原が言ったということは、すなわち、これから世話になる、礼華女学校の校長ということだろう。
その前で、夫婦とはいえ、男女が抱き合うのはまずい。
櫻子は、頬を染めながら、焦りに焦った。
コメント
1件
みぅです🤍🥀 133話、読み終えたよ…! 朝の通学シーンから始まったけど、金原さんの「まじないだ」って言って櫻子さんの額にキスするところ、甘すぎてやばかった…/// あの「落ちるだろう」って抱き寄せる流れ、完全に計算だよね、ずるいよ金原さん💔 でも!そこに虎のツッコミが入ることで、一気にコメディになるのがまたいいバランス。校長先生の前で抱き合ったままとか、櫻子さんの焦り方が可愛すぎてにやにえが止まらなかった笑 次、どうなるんだろう、続き気になるよ!