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「組合上がりでね・・・
知り合いのつてで流れて来て
うちでなんとかなるかと思いましたが・・・
しょうがありませんな・・・・
彼には今月でうちをあがってもらいましょ 」
「あの人・・・・
どうして怒っていたの?・・・ 」
思わずキラリは疲れている
おばちゃんに聞いてしまいました
「うちの仕事はきついからね
雇い主が自分達から搾取していると思っているんですな
ああした輩は何かと要求ばかりしてきます
給料を上げろという要求に応じれば
次に労働基準法がどうのと、のたうち回る
挙句の果てには近所の同業者にうちの悪口をまき散らして
そして自分には合わないと言って去っていくんですな
一生うだつのあがらない人間というものは
不思議とみんな同じ行動をするものでね・・・
努力を嫌うんですな・・・・」
労働者階級と支配階級・・・・・
この時キラリは雇う側のおばちゃんと
雇われる側の職人では
どうしてこうも見ているものが違うのだろうと
不思議に思っていました
そしておばちゃんはキラリが一生忘れることのない
言葉を発しました
「自分が世の中に価値を生み出している
以上の富は欲しがらないことだよ 」
そう言うとおばちゃんは何やら
デスクの横にあった
バケツを持って出て行こうとしました
そのバケツには
ゴム手袋や洗剤
柄のついたスポンジなど
掃除用具一式が入っていました
「おばちゃん?それ持ってどこいくの? 」
あわててキラリは聞きました
「がちょうに餌をやりにさ」
「がちょう・・・・・・ 」
一瞬でキラリはこの間おばちゃんが話してくれた
イソップ物語を思い出しました
しばらくキラリの反応を見ていた
おばちゃんの口もとがにやりと上がり
キラリに言いました
「ついてくるかい? 」
キラリははじかれたように
立ち上がりました
今やおばちゃんは白い割烹着を着て
バケツの中には掃除道具一式を持って
工場の外に出ました
いったいどこへ向かっているのか
キラリは不思議に思いながらも
おばちゃんの後ろをテクテクついて歩いていました
だって確かに
さっきおばちゃんはこう言ったんですもの
「がちょうに餌をあげに行く」と・・・