「そっか、暗くなるから気をつけて帰ってきてね。ご飯作って待ってるね。」
電話が切れる。ルツの声が頭の中でこだまする。心配させてしまった。早く帰ろう。
「貴方そんな顔もできるのね!」
不機嫌そうな声が思考を遮った。見ると、銀髪の長身の女がこちらを見下ろしていた。
「何?」
不機嫌そうな顔がさらに歪む。せっかくの整った顔が台無しだ。
「私にはあんな顔しないじゃない!せっかく協力してあげてるのに!」
「別に強制してるわけじゃない。嫌ならしなくていい。」
本当の事を言っただけなのに、女は顔を赤くさせた。
「っっ!!何よ!もうっ」
ソファ日曜日置いてあった二つのクッションが飛んできた。が、当たらなかった。代わりに置いてあったシックなゴミ箱に命中して中身が床に散らばった。
大きなため息を吐き、頭を掻いた。早く帰りたいんだが、、、仕方ない。
「セルナーシャ。」
「・・・何よ。」
「俺は俺の目的がある。それの達成にはお前がいる。だから頼んだ。」
「・・・」
頬を破裂しそうなほど膨らませてこちらを見ていた。こうしていると、とても少女のようだ。見つめ返すとまた顔を赤くして目を逸らした。
「こっち見ないで!」
・・・理不尽な。やはり女は分からん。
すると部屋の奥から小さな物音が聞こえた。
カタッ
大きなため息を吐く。本当に帰りたいんだがそううまくいかないものだな。
「起こしたか、すまん。」
部屋の奥の二人に声を掛けた。すると呼んでもないのに飛んできた。お腹に直撃した。それも二人分。
「ロロ!帰るんですか?」
「今日はもう暗いから泊まっていったら?」
金髪といえばちょっと薄い。黄色、が案外しっくりくるような色の髪。片方はまとまった髪を肩にかからない程度までカットした男。もう片方は癖っ毛で肩まで伸ばした髪。顔だけならどっちなのか分からないほど似ていた。
「とにかく離してくれ。・・・ロッケイ、ロッカク。」
はあいと返事をして潔く離れた二人はどうしても離したくなかったのか、手だけは離してくれなかった。
二人は先月行き倒れているところをルツと仕事中に見つけた。その時はかなり警戒されたので放置して帰ったが、警戒している時の瞬発力で使えると判断し個人的に保護したが、、、懐かれた。
少し面倒だが、使えるので育てる事にしている。まだまだだが、少しづつ動けるようになってきている。そろそろ外で動かせても良いかもしれない。今度実戦をさせてみよう。
「とりあえず、今日は帰る。」
が、二人が手を離してくれない。二人とも俺より背が高いので知らないやつから見たら俺が絡まれてるみたいになった。
「「・・・ロロ。」」
「何だ。」
背の割に幼い顔を少し歪ませて、緊張気味な声で呼ばれたので、なんだか腑抜けた声が出た。駒にするつもりで拾ったのに、このままではもっと親しい関係のようだ。
体がグッと重くなる。身体が苦しくなった。
だがそれは病気なんかではなく、ただ単に二人に抱きつかれただけだ。
「次は、いつ、来てくれますか?」
泣きそうな、寂しそうな声が耳元で微かに聞こえた。
「泊まってかないの?」
正直なところ、少し面倒だと思う。だが、こいつらにはそれ以上の価値がある。今は従順だが、もし俺が冷たくして反抗されても困る。
「また来週にくる。その時は、俺から一本とれるぐらい強くなっとけよ?」
口をへの字に曲げている少女ロッカクと我慢するように手を握る少年ロッケイの頭をクャッと撫でた。
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5話の裏です