私は昭人にフラれて深く傷付いたからこそ、もう同じ失敗を繰り返したくないと思っていた。
尊さんと付き合おうと思ったけれど、彼が本当の意味で私を選んでくれるかは分からない。
こんなにいい男で御曹司なのに、私がその相手でいいの?
もしかしたら、利用価値がなくなったら捨てられてしまうかもしれない。
まだ彼を心から信頼できていないから、そう思ってしまう。
なのに尊さんは、私の不安を見透かしたように畳みかけてくる。
「失敗のない人生なんてないんだよ。諦めろ。俺の手をとって後悔しても、その時は俺に相談しろよ。二人で考えて、どうしたらもっと良くなるか考えればいいだろ。行動する前に『失敗するかもしれない』って怯えて動けずにいたら、何も始まらないんだよ」
「…………そう、……だけど……」
理路整然と言われ、少しずつ気持ちが落ち着いていく。
「俺だって百パーセントの自信でお前を幸せにできるかは分からない。大切にする自信はあるが、朱里が俺の言動を嫌がる可能性はあるし、家族のせいで不快な思いをするかもしれない。完全に幸せが保証された未来は用意してやれない」
「…………それは、仕方ないです。未来がどうなるかは誰にも分からないですから」
呟くと、尊さんは私の胸に手を当ててきた。
「こんなに近くにいるのに、俺はお前がなにを考えているのか分からない。触れ合っても、セックスしてお前の中に深く潜り込んでも、心なんて一生分からないんだ」
悲しそうに言われ、彼が本当に私を想ってくれているのが伝わってきた。
「俺はお前と付き合いたい。結婚するかって言ったのは、半分ノリだけど半分本気だ。現時点で、朱里以外に魅力を感じる女はいない。だから、二人でまず一歩踏み出そう。行動したあとに考えればいいんだ」
そう言って尊さんは私に手を差し伸べ、真剣な顔で見つめてくる。
私は少し間を置いたあと、そっと彼の手を握った。
「……私が間違えそうになったら、教えてください」
「俺だって間違えるよ。話し合っていこう」
尊さんはクスッと笑い、しっかりと私の手を握った。
――この人なら大丈夫かもしれない。
学生時代からずっと殻の中に籠もっていた私の心の扉を、尊さんがノックして開こうとしている。
『そこにいたい気持ちも分かるけど、一緒に歩かないか?』と誘ってくれている。
――この人となら、いい方向に変わっていけるかもしれない。
「……よろしく、……お願いします」
一度は付き合うと決めたけれど、私は改めて彼の気持ちを確認し、今度こそ共に歩こうと覚悟を決めた。
「宜しく、朱里」
尊さんはフワッと優しく笑い、私の額に口づけた。
完敗を覚えた私は溜め息をつき、脱力してソファに身を預ける。
「頑張ったから、今日は見逃してやるよ」
「え?」
目を瞬かせると、尊さんは私の髪をサラリと撫でて立ちあがる。
「セックス。したくないなら見逃してやる」
そう言われた私は、無意識に尊さんのシャツを掴んでいた。
「……ん?」
彼は目を細め、私を見て微笑む。
――ずるい。
尊さんはいつも私に求めさせようとする。
「……したくないなんて……。言ってないじゃないですか」
「じゃあ、するか?」
尊さんは笑みを深める。
デートって聞いて高い下着をつけたのに、何もなかったらいじけるしかない。
かといって、自分から誘うのもなんだし、その前に昭人と遭遇してしまってテンション駄々下がりになっていた。
こうやってエッチについて触れられなかったら、きっかけを掴めないままだっただろう。
(……結局、尊さんに救われるんだ)
彼はいつも憎まれ口を叩いて悪者になりながら、先手を読んで私に手を差し伸べてくる。
(こういう気遣いができるんだもん、仕事だってできるよ)
そう思うと、尊さんがいつまでも部長止まりなのを疑問に感じた。
けど、今は――。
「しますよ。高級ホテルでエッチなんて、そうそうできないんだから」
開き直って立つと尊さんはクスッと笑い、「風呂に入って愚民共を見下ろしながら、高いシャンパン飲むか」と言った。
「ん……っ、ふ、――――あぁ……」
黒い大理石でできたバスルームで、私たちはジェットバスの泡に包まれたまま、深いキスを交わしていた。
側にはシャンパングラスがあり、金色の液体の中で繊細な泡を浮かばせていた。
コメント
2件
↓そうだね~🥺❤️ お互いが、お互いの存在に救われているんだよね....✨ 強い絆で結ばれた二人🖤♥️ 最高級のシャンパンを開けて🥂🍾熱い夜をすごしてね....🏨🌃💕✨
お互いが救われるんだよ🥹さ〜愚民共を見下ろしながら、最高のシャンパンとエッチを堪能しよう〜🥂凸凹❤️🔥