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昼は何と、鶏の丸焼きだった。
中にはピラフが詰まっているそうだ。
美味しそうだけれど、この時期にこのセレクトという理由が僕には謎だ。
なので先輩に聞いてみる。
「これは、何故か聞いていいですか?」
「本当は、これを七面鳥でやりたかったんだ。トルコの新年だと、これがメジャーだからさ。日本だとクリスマスのイメージが強いけれど。ただ残念ながら、駅前のスーパーにはターキーは売っていなかった。だから代わりに、チキンの中抜きを使ったんだ」
なるほど。
でも疑問はまだある。
「参考までに、どうやって焼いたんですか」
「寮の共用場所にあるオーブンレンジを使った。まだ寮に帰っている人は少ないからさ、1時間ほどオーブンレンジを使わせて貰った」
何か、凄く手間がかかっている。
「すみません、こんな豪勢な料理を」
「いや、暇だと何か手間がかかるものを作りたくなるんだ。趣味かな」
そう言いながら、先輩はチキンを切り分けてくれた。
更に、ピラフや野菜も取り分ける。
いただいてみると、まずチキンの皮がパリッパリで美味しい。
更に、ピラフが猛烈に鶏味になっている。
「これは、文句無く美味しいのだ」
「鶏の丸焼きは初めて食べたけれど、美味しいね」
「いや、下手なのはパサパサで、あまり美味しくないんだ」
昔、スーパーでまずい鶏の丸焼きを買って、家族で食べたことがあるから知っている。
こんなに皮がパリパリで、胸肉すらジューシーな仕上がりにはならない。
「これは中に、固めに炊いたピラフをぎっちり突っ込むのがポイントなんだ。そうすると、ピラフの米が中の水分をいい感じで保持してくれる。あとは15分に1回、バターを周りにしっかり塗ってやることかな」
やっぱり手間がかかっている。
「こういうのが出るなら、毎日勉強会でも悪くない……いや、やっぱり悪いのだ……」
亜里砂さんも、そういう感じになってしまっている。
そのくらいに美味しい。
「それで、どうだ。宿題の状況は」
「順調です。多分、亜里砂さん1人でも、ほとんど出来たんじゃないかと思います」
「未亜先生の特訓のおかげかな」
先輩がにやにやして、続ける。
「なお宿題の件は、美洋にメールで聞いてみた。向こうでは昨年帰省してすぐ、未亜先生によるマンツーマン地獄の宿題講習が行われたそうだ。美洋に言わせると、自分1人でこっそり宿題をやった方が楽だったんじゃないかと思うくらいの状況だったそうだ」
うわあ。
想像はつくけれど。
「美洋も大変だね」
「あっちに参加しないで済んで、幸いだったのだ」
亜里砂さんが、しみじみという感じでつぶやいた。