テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#上司×部下
臣桜
46,857
#身分差
日暮ミミ♪
397
#オフィスラブ
猫塚ルイ

615
#ラブコメ
ひより@清楚系肉食女子捕獲中
5,387
「…………っ!?」
強引に目をこじ開けると、既にそこは真っ暗闇に包まれていた。
あ、あれ……私……。
急いで記憶を巻き返そうとして、それより先に、明らかな違和感が襲うので思い出す事は強引に中断された。
今のは、夢?それにここは……。
確かに覚えのある部屋のレイアウト。
驚く程に寝心地のいいマット、滑らかなシーツ。
それに、薄い布団を被って丸くなると、鼻先いっぱいに広がる甘い香り。
前と違うのは、これだけ。
私がこの香りを、常葉くんのものだと知っていること。
うわぁ、全部が常葉くんの匂いだ……。
……久しぶりだなぁ……
……………え、常葉くんの…………?
その事実が飛び込めば、一気に身体を持ち上げて辺りを見渡した。
気付いて、違うのがもうひとつ。
隣に、彼の姿は無かった。
下着もつけてあったし、Tシャツも着ていた。それに、前と同じ場所に眼鏡もあった。
だけどどう思い返しても、自分で着た覚えは全く無いし、ここに眼鏡を置いた記憶はもっと無い。
……その前に、常葉くんは……
落ち着かないのは、彼の所在が分からないから。
ベッドから降りて、音を立てないように変に力を入れてそのドアを開けた。
リビングも真っ暗だったけれど、既に闇に慣れた私の瞳はその姿を見付けた。
『このソファー、ベッドには向いてないし』
自分で意地悪なこと言ってたのに。
……なんでここで寝てるの?
あの時と同じ様に、顔のそばで中座りしてあどけない寝顔をじっと見詰めた。
『……たくない』
ふと、記憶に引っかかる言葉が過ぎる。
…………そうだ、私。
『隣で、寝たくない』
これ以上触れられると、戻れなくなりそうだからって
子どもじみた、反論をした。
その瞬間、目の奥から涙がポロポロと零れ落ちた。
彼の寝息と共に、鼻をすする微かな音がリビングに響く。
起こすのも嫌だし、こんな所見られるのは、もっと嫌だ。
来た時と同じ様に音も立てずに、寝ていた部屋に戻ると、あの香りが出迎える。
泣きたくなる程に、甘い香り。
流れる涙を拭う事もせず、零れそうな嗚咽を閉じ込めるように口を手で抑えて、背中をドアに預けたままずるずるとしゃがみ込んだ。
……旺くんが、あんなに執着するところ、初めて見た。
以前の私だったら直ぐにそれを受け入れたはず。
なのに、なんで。
“なんで?”なんて
自分のこと、自分だから、よく分かる。
────もう、見れない。
常葉くん以外、見れない。
やだよ、やだ。
好きになっても、報われない。釣り合うわけない。
好きになりたくない、なっちゃだめ。
なっちゃ、だめなのに。
……追い出すのは、優しさなのかな。
諦めるように、言ってくれたのかな。
わかんないよ、わかんない。
「教えてよぉ……常葉くん、」
消えそうな声は、誰にも聞かれることも無く
その部屋の中に、閉じ込められた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!