テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
しなもん ここあ たん .ᐟ
860
110
、、、風邪引いた
――朝、目を覚ました瞬間、身体が石のように重かった。
熱い。苦しい。嫌な汗が背中を伝う。頭がぼんやりして、目眩で視界が揺れる。まるで自分の体温そのものが沸騰しているみたいだ。俺はロシア。社内最強のはずだ。……それでも、風邪には勝てなかった。
――爆熱。息を吸うだけで胸が痛い。動けない。……情けない。
それでも、なんとか手を伸ばして端末を掴み、『A』に連絡を入れた。
『あちゃー、社内最強でも体調不良には敵わないかぁwww』
耳に刺さる、軽薄な声。俺の脳がじりじりと焼ける。
『んで、聞いた感じだいぶ重症だね? 大丈夫? 誰か看病に派遣してあげようか? あ、でも社内最強がぶっ倒れたとなると混乱が広がりそうだから同じ幹部のなかから指定してね?? お気に入りの部下とか居たらごめんだけど。』
……誰でもいい。いや、誰でもよくない。俺は熱に浮かされながら、かすれた声で答える。
『……誰でも……いい……』
『で? 誰に来て欲しい? 多分9時ぐらいに着くと思うよ。じゃあ、考えといて〜』
電話を切る直前、雑音に混じって別の声が聞こえた。
『Aさ 。頼 れて 書類終わ りま た』
中国の声だ。雑音越しで途切れ途切れだが、間違いない。俺の熱で朦朧とする頭が、一瞬だけ冴えた。
――中国……?
『って中国君!?!? えもう終わったの!? はっや!! ねぇ俺三日分の書類渡した筈だよね、、、え、それを、、、半日で、、、多分どこ探しても君ほど仕事が速い奴居ないと思う、化け物だって君さぁ、、、』
『A』がはしゃぐ声が耳を刺す。俺は布団の中で目を閉じる。頭がぐらぐらする。けれど、その声にだけは反応してしまう。
――中国……来てくれるのか……?
『もう♡大好き中国君♡君ほど有能な駒はないよキスしたい♡しよ?ね!ちゅっちゅ痛いッ、ってなぁ、ボールペン投げなくても、、、前から思ってたけど容赦ないね中国くん。』
ぼんやりとした意識の中で、俺は笑いそうになった。熱でぐらぐらする脳が、あいつの姿を勝手に思い浮かべる。小さな体、死んだ魚の目、包帯だらけの腕と首。
『さて、どうしよう。これ以上君に回す仕事今のところないんだよなぁ、、、あ! そうだ。どこかの誰かさんが熱なんだけど面倒見に行ってくれない?』
『いいで けど、誰な ですか?』
『内緒、ヒント言ったら君が全力で拒否する人』
『おい待てちょ、やっぱやめ』
『やめれるわけないじゃーん? 自分で言ったもんね!! じゃ、さっさと行ってこーい』
電話が切れる。部屋は静かになった。俺は布団に沈み込みながら、心の奥で小さく笑った。
――ああ、来るんだな。中国が。俺の紅星が。
熱で意識が溶ける。けれど、心だけは妙に騒がしい。
……早く、来いよ。
コメント
1件
あ〜第8話、読み終えたよ……。 ロシアが風邪でダウンしてるの、なんか意外というか、でもすごく人間らしくてグッときた。「社内最強でも風邪には勝てなかった」って台詞、切なすぎるよ……。 Aの軽いノリに対して、ぼんやりしながらも「中国……?」って反応しちゃうロシアの心情、熱で溶けかけの意識なのにちゃんとあいつを認識してるのがもう、尊い。最後の「早く来いよ」がめちゃくちゃ効く……。 紅星、って呼び方も好き。ライチジャマさん、今回も良かったです。続き、楽しみにしてますね🌙