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拓人に拾われて以降、優子は男の欲望を満たし、時々、男の命令で、かつての上司、松山廉と会い、売女として身体を交える日々を過ごしている。
拓人は、廉と優子が職場の上司と部下だった事を、まだ知らない。
二人の男と、並行して関係を持ち続けている優子。
そこに、恋愛感情は存在しない。
金絡みで、身体の関係を繋がらせているだけだ。
優子は拓人に、いつか優子と廉が知り合いだった事がバレるのではないか、という不安が拭えない。
けれど、優子の手元には、かなりの額の金がある。
男に拾われてから、二ヶ月ほどになった今、彼女は三百万近く稼いだ。
(お金があるのはいいんだけどさ……。何やっているんだろう、私……)
彼女は自己嫌悪に陥るけど、犯罪者だった自分は、身体を売って生きていくしかない、と思う。
けれど、拓人のセックスは、優子が今までに感じた事のない快楽の坩堝へ引きずり落とし、男の身体から離れがたい、と思っている自分がいるのも確かだった。
犯されているような抱かれ方でも、『女としての悦び』を、優子は、感じずにはいられない。
「…………依頼主が、今週末、またあんたとヤリたいだってさ。しかも同伴ときた。三連休の土曜日と日曜日。待ち合わせは、いつものホテルの正面玄関前な」
男は、ほくそ笑みながら優子に伝える。
「まぁ金は倍額請求したし、日曜の夕方までに、あんたを返して欲しいって言っておいたから、よろしくな」
拓人が、ソファーに寄り掛かりながら、スマートフォンの画面を指先で滑らせていると、呆れたように小さくため息をつく。
依頼主とは、彼女の元上司、松山廉。
「に、しても。先方もよく飽きないよなぁ……」
ハハッと笑い捨てる男に、優子は視線を飛ばす。
二ヶ月ほど男とホテル暮らしをしている彼女は、私と拓人って男の間柄って何だろう、と不意に思う。
名称不明の関係は、優子の中をモヤらせ、時にイラつかせた。
「ねぇ。ふと思ったんだけどさ」
「は? 何?」
「私とアンタの間柄って、何なんだろうね?」
優子は前髪を大雑把に掻き上げながら、拓人にチラリと見やった。
「なに突然、変な事聞いてんだよ」
男は、脚を組み替えながら、ガラスのスライドドアに映っている眩い夏空を見やると、やがて不気味な笑みを彼女に見せた。