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【BioTOPE(春嵐編)あらすじ 】
『小テストで赤点を取ったものはロカ先生に能力を破壊される。』
その通知を見た米津高校の生徒達は様々な方法で赤点を回避しようと画策した。
能力を使い小テストの問題の 情報を手に入れた者。
時間を巻き戻す能力を使いめちゃくちゃ勉強した者。
それぞれの 思惑が交錯する中、運命の小テストが 今、始まろうとしていた。
【運命の小テスト、当日】
《朝のHR、米津高校一年B組にて》
「では、改めて、今回の小テストについて
説明します。」
穏やかに、柔和な笑みを湛えながら、それでいて冷ややかにロカ先生は言った。
198cmもある女教師ロカの身体は教壇に立つとより 大きく、威圧的に見えた。
「今回の小テストは国、数、英、社、理の
五科目、全部で250点満点です。その内150点未満のものは罰として私の《エンプレス•ディスコ》で心をへし折った後に能力を破壊します。」
ロカ先生はそう言って生徒達に向けてゆるやかに右手を掲げてみせた。
ロカ先生の言葉が決して嘘やハッタリでないことをこの教室にいる全ての生徒が知っていた。
「今回の小テストの難易度は前回の小テストのおよそ2倍です。」
「2倍!?嘘だろ!!?」
と以前の小テストで赤点を取った海街心蔵
は思わず叫んだ。
(当たり前だろ、あのロカ先生が簡単に赤点回避させてくれるわけないだろ。)
と、千代子令子は心の中で 海街に呆れた。
「公平を期すため、一年生の五クラスは私と
この学校のOBの能力者に造らせた私のアバター4人で監視させてもらいます。アバターには能力はありませんが観察力、身体能力は私と ほぼ同程度なのでくれぐれもテスト中にスマホ、及び能力を使ってカンニングしないように。」
ロカ先生はゆっくりと生徒一人一人に話しかけるように言った。
その様はお前達の一挙手一投足決して見逃さないぞと生徒達に暗に言っているようだった。
(ここにいるロカ先生は本人なのかなー?
それともアバターなのかなー?)
恋原表裏一体は
《裏表ラバーズ高速振動でロカ先生を攻撃したい欲をぐっとこらえながら先生の話を黙って聞いていた。
ロカ先生は自分が能力を発動するより遥かに早く自分の肩に触れ能力を破壊することが可能であると、そこそこかしこい表裏一体は
知っていたからである。
「小テストの説明は以上です。何か質問は
ありますか?」
妖しげな微笑を浮かべながらロカ先生は
生徒達に尋ねた。ロカ先生のとてつもない
威圧感に、手を上げるものなどいなかった。
ただ一人を除いて。
「はいはいはーい、ロカ先生質問ネー。
テスト中に能力つかちゃダメてことは
テスト前の今なら使ていいってコトアルかー?(脳内cv.水瀬いのり)」
学年一位の天才、独絵転々はなぜか純日本人なのにカタコトで
ロカ先生に言った。
彼女は髪をライムグリーンに染め上げ頭にチャイナ娘風のシニヨンカバーをつけ、制服をチャイナ服に魔改造していた。
この服装は 紛れもなく校則違反であった。
そんな彼女の横暴が許されていた理由は二つ。
一つは米津学園が生徒の安全に関わらないルールには寛容だったこと。
もう一つは彼女が学年一位の天才だったことである。
「……ええ、もちろん。今この時点ではスマホも能力も使用可能です。ただしあからさまな カンニング行為、及び他の生徒に危害を及ぼす行為を見かけたら即刻私がその生徒を手刀で気絶させた後に、休み時間中に私の
《 エンプレス•ディスコ》で能力を
破壊します。」
ロカ先生は一瞬で教壇から一番後ろの席まで
高速移動し、そしてすぐに教壇に戻ってきた。
とてつもない風圧が、遅れてやってきた。
クラスの女子の白雪毒林檎が
「きゃっ!!?」
と悲鳴をあげた。
恋原表裏一体は急いで乱れた前髪を指で 整えた。
ロカ先生の動きを捉えれるものはこの学園に一人もいなかった。
(元軍人とはいえ、明らかに人間の出せる
スピードじゃない。能力は基本一人につき
ひとつ。 やはり、何かしらの能力を他人から借りて 身体能力を補ってるな……。)
この教室内の生徒と中で能力者との戦闘経験の一番多い妖怪沢どろりですらこのように分析するのがやっとだった。
ロカ先生の言葉の真意を生徒達は理解した。
今この瞬間なら黙認してやる。
能力を使いたければ使え、である。
「ロカせんせありがとネー。それじゃ遠慮なく、 《ローリンガール》。」
そう言って転々は最前列の席を立ち机と机の
間ででんぐり返しをした。
彼女の奇行を見ても誰も何も言わなかったのは、彼女が《友好型》の能力者で彼女の能力をクラス全員と教師全員が知っていたからである。
転々の能力《ローリンガール》はでんぐり返しをすることで頭の回転を良くするという
極めてシンプルな能力だった。
彼女はこの能力をクラスの自己紹介の時に
発表し、クラスのランダムな出題者5人の
出した難問に全て3分以内に答えてみせた。
その中の一人の転々のことが嫌いで嫌いでたまらない 双子の姉の独絵三十九秒が出した数学の大学レベルの難問でさえ、彼女は高校生一年生の持つ数学の知識だけで3分以内に問いてみせた。
正直、小テストで満点を取るだけなら転々は
能力を使わなくても造作のないことだった。
しかし、姉の三十九秒に確実に勝つために、
そして他の生徒が赤点を回避するチャンスを与えるためにわざわざ転々はあのロカ先生の前で堂々とでんぐり返しをしてみせたのだ。
恐ろしい肝の据わりようである。
妹の転々の挑発とも呼べる行為に応えるように姉の三十九秒も能力を発動した。
姉の能力は《アンハッピーリフレイン》、能力は 『勉強中に鉛筆を転がすことで39秒時を巻き戻す能力』である。
この能力はテスト本番には使えない。
結果的に敵(妹)に塩を送られる形となった三十九秒は下唇を噛みながら時を何度も巻き戻し、テスト範囲の最終チェックを始めた。
三十九秒は妹にだけは負ける訳にはいかなかった。
自分の途方もない時間と労力をかけて挑んだ勝負を妹のたった一回のでんぐり返しに覆される屈辱。
その屈辱を姉である三十九秒はこれまで何度も味わってきたのだ。
(妹にだけは負けるわけにはいかない、負けるわけには……いかないッッ!!!)
その緊張は本番にものすごく弱い性格の 独絵三十九秒にとてつもないプレッシャーとなりのしかかった。
他のクラスの能力者、非能力者達も一斉に
最後の追い込みをした。
右肩から蝶を出し 何かを唱えるもの。
テスト中にトイレに行きたくならないように自らの男性器を小さな 日本刀に変えて鞄の中にしまうもの。
神に祈る無能力者の男子。彼ら彼女らはそれぞれ赤点を取らぬよう必死に彼らの最善を尽くした。
ロカ先生はその様子を極めて冷静に観察していた。
(あの子…..擬態型だったのね。あの子の
能力も違う……あの子も、あの子も…..ふむ。)
ロカ先生が今回の小テストで赤点を取った
生徒の能力を壊そうとするのにはとある理由があった。
それは、ロカ先生は最近校内で流行り始めた
《トイレの亡霊》の噂の真相を探っていたためである。
『放課後、トイレで悪さをした生徒達が
どこかへと連れ去られてしまう。』
どこの学校にでもあるただの怪談。
能力の無い世界ならそう笑ってスルー出来ただろう。
しかしこの世界は能力者のいる世界。
そのためロカ先生は最悪の想定をする他なかった。
(生徒の中に何らかの能力を使って他の生徒を消して回ってる輩がいるッッ…..!!!)
この最悪の想定を覆すためにロカ先生は まずは一年生にターゲットを絞り彼ら彼女らの能力を見極めようとした。
ただの噂話であればそれでいい。
本当は全ての生徒の心と能力をこの手で破壊して生徒達を危険な能力から守ってあげたい。
ロカ先生はそんな風に願っていた。
(……私の教師としての勘が、どうか間違い
でありますように。)
生徒達の能力をチェックし既にクラスの過半数 の能力者達の能力を確認し終えたロカ先生は心の中で祈っていた。
しかしロカ先生の教師の勘は、最悪なことに
当たっていた。
《トイレの亡霊》の正体、手の平で触れた人間をどろどろに溶かして消す能力《メルト》の持ち主妖怪沢どろりは決して目立たないように普通に勉強していた。
他の能力者達が 派手な パフォーマンスをしている横でどろりは普通に勉強していた。
どろりは決してロカ先生にこの能力を悟られる訳にはいかなかった。
この世界では基本能力者の能力による犯行は決定的な証拠がない限り法で裁くことは 出来なかった。
第2次能力者戦争によって能力のメカニズムが分かり始めた現在でさえ能力者による犯行と冤罪の区別が極めて難しかったためである。
しかしロカ先生は先生であって警察ではない 。
疑わしきは《エンプレス•ディスコ》。
それが教育女帝ロカ•タランティーナの
信条であった。
ロカ先生が疑えばすぐに 《エンプレス•ディスコ》で能力を破壊されてしまう。
するとどろりの 《手を伸ばせば届くだけの世界を変える》 という願いを叶えることが極めて難しくなる、とどろりは考えていた。
凶悪で狡猾な能力者に対抗するには《メルト》という能力が必要不可欠なのだ。
(《メルト》を破壊されるのはよくない、
それはとてもかなしいことだ。)
この手で世界から少しでもかなしいことをなくしたいと考えるどろりは、そのため徹底的に無害な生徒を演じた。
果たして、どろりはロカ先生のローラー作戦をかわすことは出来るのか?
ロカ先生はどろりの擬態を見破ることが出来るのか?
生徒達は赤点を 回避することが出来るのか?
運命の小テスト、一年生編は後編へと続く。
(最後まで読んでくださりありがとうございます。)