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式場を出て行くと、亜由美と新吾、誠人の三人の従兄妹たちが早速私に気がついて、いそいそと近寄ってきた。
「美祈も行くんだってな。お前もそろそろ出会いを意識し始めたか。俺と一緒に頑張ろうな」
「別に、私はそこまでじゃないけど」
「え、そうなのか?」
新吾が目を丸くした。
「なんだよ。せっかくの出会いのチャンスだぜ。何かしら縁を繋ごうって積極的に思って行かないと」
力説する新吾から私はやや体を引く。
「新吾君、随分張り切ってない?」
双子の弟の誠人は苦笑いを浮かべている。
「最近親友の一人が結婚したっていうんで、置いて行かれたような気になってるみたい。でも、あんまり意気込んで行ってもねぇ。周りに引かれそうだよね。それにそもそも合コンじゃないしさ」
冷静な物言いをする誠人に私は思わず笑ってしまった。
誠人は双子の弟なのだが、時々新吾よりも誠人の方が兄のように思えることがある。
「あのね。すみれ姉の華道教室の友達が、うちらの従兄たちに会えるかもっていうんで、楽しみにしてるらしいんだ。なので、二人とも、よろしくお願いします」
「何がよろしくか分からないけど……」
苦笑する新吾の隣で、誠人が疑問を口にする。
「ちなみに、どうして俺たちに会うのが楽しみなの?」
「すみれ姉ね、うちの従兄たちはイケメンだって、事あるごとに周りにずっと自慢してたみたいなんだよね」
「へぇ。そんな風に言ってもらって光栄だけど、今日は悠生兄がいないからなぁ。イケメン率が低くて申し訳ないな」
「新吾、『イケメン率』とか自分で言ってて恥ずかしくないの?とにかくそういうことなら、すみれちゃんの顔を潰さないように、善処しようか」
「そうだな」
新吾は頷き、それから私に訊ねる。
「ところで、美祈。悠生兄が来ないのは、明日仕事かなんかで?」
亜由美の前で真実は言わない方が良さそうだ。私は曖昧に笑って適当に答える。
「なんか用事があるとかなんとか言ってた」
「ふぅん。なら、俺にも少なからず勝算はあるかな」
「勝算って何が?」
訊ねる亜由美に新吾はにやりと笑う。
「悠生兄がいると、女子全員の目がそっちに向いちゃうじゃないか。だけど悠生兄がいないなら、俺に目を向けてくれる子だって一人くらいはいるかもって意味」
「悠生君、ほんと、カッコいいもんねぇ……」
亜由美はしみじみと頷いた。
誠人が新吾をからかうように言う。
「そう言えばお前、先月も合コン行ってなかった?悠生兄のいないその時は、どうだったのさ」
「行ったけど、出会いがなかったんだよ」
「ふぅん。結婚したいんなら、母さんに頼めばすぐじゃないの?あの人、色んな伝手を持ってるからさ」
皮肉な口調をにじませた誠人の冷静な言葉に、新吾は首を横に振る。
「そういうのじゃなくて、俺は自然な出会いがほしいの」
「自然ねぇ……。そんなにぎらぎらしてたら、みんな引くんじゃない?だから先月のも玉砕したんじゃないのか」
「うるさいな。俺なりに頑張ったんだよ」
亜由美が苦笑いしながら、双子の会話に割って入る。
「少し早いけど、そろそろ店に移動しよう」
亜由美に促されて、私たちは式場を後にした。
タクシーに乗って向かった先は、大通り沿いにある雑居ビル二階のバーだった。亜由美の話では、すみれと彼女の夫とが再会した、ある意味思い出の場所でもあるらしい。
店内の内装は黒で統一されており、入って右手にカウンター、後はホールになっていた。奥の方は窓ガラスになっていて、通りの灯りがにじんで見える。
ドアを開けて入ったすぐそこが二次会の受付となっていて、そこで名を告げ会費を支払う。
「どこに座る?」
亜由美は店内をきょろきょろと見回して、空いている席を探した。窓側のテーブルに知っている顔を見つけたらしく、そちらに向かって手を振った。
「あの二人が、さっき言ってた、すみれ姉の華道教室の友達よ」
「そう言えば、亜由美ちゃんもすみれちゃんと一緒に、お花を習ってるんだったね」
「うん。だから、私もあの二人と知り合いだよ。うちらみんな座れそうだから、あそこにしようか」
「よし」
新吾は急にきりっとした表情を作った。心なしか背筋も伸びたような気がする。
それを見た誠人はちらりと苦笑を浮かべ、兄の後を追う。
従兄たちの後に続こうとした亜由美の袖を引いて、私はこっそり訊ねる。
「ねぇ、亜由美ちゃん。あの二人が、新吾君たちに会いたがってたって言う人たちなんだよね」
「うん、そうだよ」
「私も一緒に行って大丈夫かな?」
「へ?なんで?」
「なんか、私、お邪魔だったりしないかな、と」
亜由美はきょとんとした顔でしばらく私を見つめていたが、あははと笑う。
「何言ってんの?そんなこと言ったら、私も邪魔者ってことになっちゃうよ。それに、悠生君から頼まれてるんだから、美祈ちゃんを一人にはしないよ。ほら行くよ」
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「う、うん」
私は亜由美に引っ張られるようにしながら、テーブルとテーブルの間を通り抜けて目的のテーブルへと向かった。
合コンとはまた違った緊張具合だ。私はどきどきしながら、すみれの友人という二人の女子たちに軽く会釈した。
「はじめまして」
彼女たちはかしこまった様子で、それぞれに私に言葉を返してよこした。亜由美に笑顔で挨拶した後、私にちらりと視線を向ける。
「亜由美ちゃん、そちらの方は?」
「こっちは従姉の美祈ちゃんです」
誠人の隣に腰を下ろしかけていた私は、改めて立ち上がり二人に頭を下げる。
「遠野美祈です。よろしくお願いします」
すると二人は顔を見合わせて、感心したように頷き合う。
「『血』ってすごいね。すみれさんの一族ってみんな美形なんだね」
「ほんと、羨ましいなぁ。あれ、そう言えば、もう一人、イケメンの従兄さんがいるんじゃなかった?今日は来ていないの?」
「うん、残念ながら」
「そっかぁ。三人揃うと見ごたえあるよ、なんてすみれさんから聞いていたから、楽しみにしていたんだけどね。残念。あ、いえ、森川さんたちも、私たちの目には十分すぎるほどまぶしく映っていますから」
慌ててフォローの言葉を付け加える彼女に、新吾はくすっと笑う。
「そう言ってもらえて光栄です。でも俺たち、別に気にしてませんよ。なぁ、誠人」
「あぁ。悠生兄は、俺たちが見てもかっこいい男なんで」
「うん、それはその通りだね」
亜由美はうんうんと大きく頷いた。
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