コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
はっとして目を覚ます。悪い夢を見た、そう志保は思う。どんな夢を見たのか、そう言われれば必然的に言いたく無い。答えたく無いと言うだろう。
あと四日、あと四日耐えれば学校は冬休みに入る。冬休みに入れば何日間かは反志保グループの奴らと顔を合わせなくても済むのだ。あと四日の辛抱で、少しの間は気が休まる。
あっ、と志保は呟く。外を見ると雪が降っていた。
「こんな寒い日でもあいつらは元気に私の事いじめてくるよなぁ」
志保がそう言う。
外に出てみるとやはり寒い、天気予報では五度まで下がると言っていたが体感温度では五度以下だ。
朝食を食べ登校し、反志保グループの奴らが集まった所で今日のいじめがスタートした。
「おい、ケロイド女。もう少しでクリスマスじゃん、だからこれ私達からのプレゼント〜」
そう言って志保の机にばら撒いたのは泥、柔らかく水気が十分にありドロドロの状態の泥。しかも結構量が多い為、机上では収まらず床にベタベタとはみ出た泥が落ちていった。反志保グループの奴らは泥を撒くと珍しく何もせずに帰って行った。
机上の掃除をしている最中、ふと志保は気づく。陸斗が居ないのだ。まだ時間に余裕はあるのだが居ないとなると志保の心にぽっかりと穴が空いたようになるし、志保一人であいつらのいじめに耐えれるかどうか不安になるのだ。
『陸斗、どうしたんだろう。大丈夫かなぁ』と考えていると『おはよー』っという陸斗の声がした。志保が振り向きながら言う
「おはよー、ってわっ!何あんたそんなに濡れてるの。寒くないの?」
そう、陸斗は全身ずぶ濡れの状態で学校に来たのだ。それも外の寒さで少し服が凍っていた。
「いやー、歩いてたら転んじゃってさー。すげー冷たいよー」
そう陸斗が言うと志保は
「そりゃあそうでしょうね。変えの服とか体育着とかある?陸斗」
そう言うと陸斗は
「えっ、何も持ってきてない。今日は体育ないから体育着も何も……」
これには志保も呆れた。まぁ普通の人は学校に変えの服など持ってきてないと思うが。
「はぁ。マジか……。確か陸斗の大体の服のサイズって私と同じだよね。私の体育着貸してあげるから元々着てたの乾かして」
そう志保が言った。
周りのクラスメイトがえっという目で見てくる。『しまった。陰で言えば良かった』そう思ったがもう言ってしまったものは仕方が無い。そう思うようにした。
志保の体育着は陸斗にぴったりなサイズだった。一時間目の開始のチャイムが鳴り、先生が入ってくる。
そこからはいつも通りの毎日だった。いつも通りいじめられ、そして陸斗に励まされ、癒やされ。毎回あいつらに肉体的ないじめをされると思うのだが、あいつらは力加減が出来るという結構珍しいいじめっ子だ。殴られても蹴られてもあざが出にくいのだ。完全に出ないという訳では無いがそれでも見るからに暴行を受けたようなあざが出ない。だから親は多分自分達の愛娘の志保がいじめられてるなんて思って無いだろうし、感じても無いだろう。ーーだがその反面、本当にいじめられているという証拠を出せないのだが……。
「志保ちゃん」
陸斗が話しかけてくる。
「なに」
そう言うと陸斗が『一緒に帰ろう』と言ってきた。『良いよ』と言うと陸斗は志保の腕を掴みぐんぐんと早く帰ろうと言わんばかりに引っ張る。学校を出て結構行った所で陸斗がぴたりと止まる。「どうしたの、陸斗」
そう志保が言うと陸斗は
「ふぅ、ここまで来れば……」
と言う。『どういう事なの?陸斗』
と言うと陸斗は
「俺さ、聞いちゃったんだよね。放課後に志保の事雪に埋めていじめようって、あいつらが話してるとこ……聞いちゃって……」
その言葉を聞いてやっぱり陸斗は優しいなと思うのだった。
(皆さんごめんなさい。今日は早めに終わります。今回は現代のシーンは無しです。楽しみにしていた方、大変申し訳ございません。)
next