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自分の気持ちをちゃんと整理して、それから伝えようと思うのに、やっぱりだめだ。
指が勝手に動いてしまう。
少しして、レイから返事があった。
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泣いてる?
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私は瞬きして、すぐ瞼をこすった。
不思議だ。
どうやら今は、レイにも私のことがわかるらしい。
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泣いてないよ。だけど不安だった。
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嘘をつこうとしたのに、本当のことも伝えてしまった。
触れた窓が凍えるほど冷たくて、咄嗟に手を引き戻した時、メールが届いた。
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必ず行くから、それまで待ってて。
旅行は俺に会いにじゃなくて、いつか一緒に行こう。
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落ちた涙で液晶が歪んだ。
「レイ……」
もういいや。
もういい。
ただの口約束だとしても。
それでもレイが会いに行くと言ってくれて、一緒にいたいと思ってくれている。
それだけで十分だ。
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待ってるよ。
それまで腕時計をレイだと思って、待ってる。
だけどあんまり遅いと、思い込みだって醒めちゃうよ。
それまでに会いに来てね。
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顔を上げると、窓ガラスに映る私と目が合った。
さっきまで死にそうな顔だったけど、泣き笑いの私もすごく不格好だ。
ベッドに横になると、丸2日ほとんど眠っていなかったせいで、すぐに睡魔が襲った。
目を閉じてうとうとしているうちに、意識が沈んでいく。
“好きだよ”
沈んでいく最中に、レイの声が聞こえた気がした。
夢だ。
夢でもレイに言ってもらえると、心が温かくなる。
翌朝、起きてすぐメールが届いていることに気付いた。
慌てて飛び起きた私は、急いで画面に触れる。
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努力する。
あの時計が俺のかわりでいるうちに、澪のところに行くよ。
好きだよ、澪。
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私は何度も何度も、暗記してもそのメッセージを見つめ続けた。
本当、恋心は厄介だ。
好きなら好きなだけどんどん欲が出て、その欲に苦しんで。
悩んで怒って、何度も涙を流して。
でも、それがきっと人を好きになるということなんだろう。
だってこうして苦しんでいるうちに、本当に欲しいものがわかるから。
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私もレイが好きだよ。
大好きだよ。
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私はゆっくり立ち上がって、窓の外に目を移した。
窓ガラスは白く曇っている。
その向こう側で、眩しいくらいの光が満ちていた。