花魚の探偵業を初めて少しずつ依頼が増え、幸い忙しくしていた。ある花曇りの昼、初老の夫婦が依頼を持って来た。どうやら、夫婦の姉が亡くなり遺品整理中とある箱に手紙が入っていた。内容を要約すると、謎を解いたとき戦慄するほどの宝を手に入れると、夫婦は子供が居なく自分たちも年老いて使うほど困っていないらしく、見つけたら好きにして良いとのことだった。
矢太郎は、そんな都合の良い話があるのかと疑問だが、依頼を受ける事にした。依頼内容の謎は古びた紙に書かれて、いかにもな見た目だった。内容は、「このえたからの場所はええ谷山の、麓のえ社にある。」
この文書の上に笑った顔の絵が描いてあり、この謎は矢太郎はすぐに解いた。矢太郎は、この文書にある場所に行くとそこにも、同じような紙があった。内容は、「日が沈むが月が昇らぬ日、大きなもくせいの輪での星見たとき忘れることない宝になる。」矢太郎はそよと共に考えた、難しい、あれでもないこれでもないと考え、夫婦にも聞いたがわからない。この文書があった周辺を探し少し森の奥に入った、そこには大きな樹木があったであろう切り株があり、木の壁の様になっていた。そこで矢太郎は全てわかった謎が解ける、まさしく前にハイカラな喫茶店で飲んだクリームソーダとやらに似ていた。クリームソーダの乳製氷菓が溶け最後に完成するように、矢太郎はそよが空を見ながら今日は月が出ない日、つまり新月であることに気付いた。「月の光がないから星がすごく綺麗に見える。」
そこでようやく、宝の意味もわかった戦慄するとは肌寒い夜にしか見ることの出来ない新月の夜空。まさしく宝のようだ。矢太郎は、後日夫婦に宝の中身と謎解きの答えを伝えた。夫婦は「姉さんらしい」と呟き依頼料を払おうとした、自分たちは報酬はいただきました。と言い受け取らなかった。少し格好付けすぎたかとも思ったがあの夜空は綺麗だった。矢太郎は、この件について思ったことがある。いつも、事件や事故で人が悲しむような話ばかり、いつのまにか疲れていたのかもしれない。やはり平和が一番だと改めて実感した依頼だった。
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