コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
【第1話】「中学生活と害獣の違和感」
――害獣はずっと一緒にいるものだと思っていた。
だけど、中学に上がってから、何かが変わり始めた。
それはほんの小さな違和感だった。
🌸 1. 中学生活スタート!
「よーし! 今日から中学生だ!!」
芦野 勇(あしの いさむ)が、校門の前でガッツポーズを決める。
「……なんで朝からそんなテンション高いんだよ。」
目蒲 安(めがま やすし)がメガネをクイッと押し上げ、呆れたように言う。
今日は中学の入学式。新しい制服、新しい教室。
けれど、周りを見渡せば見知った顔ばかり。
「ダッシュ! お前、俺の足をもっと早くしてくれよな!」
「おう! まかせろ!!」
害獣たちも、いつも通り元気だ。
目蒲の肩には、フクロウのような毛並みを持つジグマがちょこんと乗っている。
「やすし、お前の席、あのへんだぞ。」
ナビスが地図を広げ、道有 成(どうゆう なる)が得意げに言う。
「いや、地図がなくても教室くらいわかるわ。」
クラスメイトの間には、相変わらず害獣が当たり前のように存在していた。
みんな害獣の能力を活かしながら、新しい学校生活をスタートさせる――はずだった。
⚡ 2. ダッシュの異変――能力が発動しない!?
「よし! さっそく試してみるぞ!」
昼休み、芦野勇が体育館で準備運動を始める。
「ダッシュ! スピードブースト頼む!」
「おう!!」
いつものように地面を蹴り、ダッシュが能力を発動――しようとした。
しかし、何も起こらない。
「……ん?」
勇がダッシュを見つめる。
「おかしいな? もう一回……」
ダッシュが尻尾をバネのようにピンッと立てる。しかし――
何も変わらない。
「遅っ!? いや、遅くはないけど、速くもない!?」
普段なら人間離れした速さで駆け抜ける勇が、普通に走っている。
「なんでだ!? ダッシュ!? 俺の足、どうした!?」
「え、俺もわかんねぇ……。」
「いやいや、気のせいだろ?」
周りのクラスメイトは笑っていたが、目蒲は違和感を感じていた。
🗺️ 3. 迷子ナビが狂う――ナビスの方向ミス
「おい、学食どこだっけ?」
「任せろ!」
道有 成(どうゆう なる)が地図を広げ、ナビスがくるくると尻尾を振る。
「ここを右に行って、左だ!」
「OK!」
自信満々に歩き出す成――しかし、向かったのはトイレの前。
「おい、ここ学食じゃねーぞ。」
「え? ……あれ?」
ナビスもポカンとした顔をしている。
「俺、方向間違えた……?」
ナビスが方向を間違えるなんて、ありえないことだった。
「まぁ、たまたまだろ。」
そう言ってみんなは笑う。
しかし、目蒲の違和感は増していく。
🍫 4. スイートの異変――味覚チェンジャーが使えない!?
「ちょっと待って! これ苦すぎる!!」
甘坂 雨衣(あまさか あまい)が保健室で大騒ぎしていた。
「スイート、お願い!! これチョコ味にして!!」
スイートが甘い尻尾をくるっと回す。しかし――
薬の味は、変わらなかった。
「……あれ?」
「え、なんで!? なんで!?」
「……たまたまじゃね?」
そう言って雨衣は苦そうに薬を飲み込む。
けれど、スイートの顔には、うっすらと不安が浮かんでいた。
📖 5. ジグマの異変――暗記能力が効かない
「ジグマ、俺のノート、暗記してくれ。」
目蒲がジグマを見つめる。
「おう、まかせろ。」
ジグマのまばたきがゆっくりと光る。
「……えっと、公式は……あれ?」
目蒲がノートを確認すると――
覚えたはずの公式を、思い出せない。
「……どうした?」
「いや、覚えてねぇ……?」
「お前がボケただけだろ。」
ジグマは笑っていたが、その目にはかすかな動揺があった。
🌥️ 6. 雲卵の影――ジョーカーが何かを知っている?
放課後、空を見上げた目蒲は、龍の形をした雲 を見つけた。
「……なんだ、あの雲?」
ジグマが、その雲を見て呟く。
「……始まったな。」
振り向くと、密鍵 樹沿(みつかぎ なぞ)が微笑んでいた。
「なんの話だ?」
「害獣がいなくなる前兆だよ。」
ジョーカーが、ゆっくりと姿を現す。
「この世界は、そろそろ“害獣のいない世界”に変わる。」
「……どういう意味だ?」
「まぁ、見ていればわかるさ。」
密鍵とジョーカーの言葉が、目蒲の胸に不安を植え付けた。
そして、その空には、龍の形をした雲卵が静かに漂っていた。