テラーノベル
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アシュレイに「俺の力になってくれ」と言われた時、魔法のことに気づいているのかと焦った。しかしアシュレイは、全く魔法のことを話さないから、知らないようだ。 では子供の俺のどんな力が必要なのかと考えてみるが、さっぱりわからない。魔法を使わなければ、その辺にいる普通の子供と変わらない。
でもデックは、アシュレイに助けてもらった。自分にできる範囲でならば、力になりたい。
だから魔法を使えることは内緒にして、アシュレイの力になることを承諾した。助けられた恩がある。本心は、すぐにでも村に帰りたい。母さんや友達のリオが、きっと心配してるから。でも恩を仇で返すことはできない。それに一人では帰り方もわからない。そう考えて、しばらくはアシュレイの傍にいることにした。
アシュレイは、この国の第五王子だった。デックが商人に連れてこられた時に一緒にいた三人は、第二王子、第三王子、第四王子で、それぞれ母親が違うらしい。
アシュレイいわく、「第一王子の皇太子は、忙しく尊い身分故に、下々の話を聞くために人前に出てきたりはしない。家臣が判別できない庶民からの陳情は、我々四兄弟に対処を任せられている」とのことだ。
兄弟との関係は、仲良くも悪くもないらしい。ただ第二、第三王子は皇太子と敵対していて、常に問題を起こしている。第四王子とアシュレイは、王位を継ぐなど天地がひっくり返っても有り得ないことから、のんびりと過ごしながら国政を手伝っているという話を、城内ではなく、王都から離れた場所にあるアシュレイの屋敷に移動してすぐの頃、話してもらった。
デックは、アシュレイの身の回りの世話をしながら、いつ村に戻ろうかと考えて過ごしている内に、一年が過ぎた。
アシュレイは第五王子で、王都から馬で一刻かかる場所の屋敷に、ほぼ一人で暮らしている。
仮にも王子が一人なんて大丈夫なのかとデックが聞くと、アシュレイは「問題ない」と笑う。笑うと花が咲いたように華やかで、つい見とれてしまう。デックは、アシュレイと会ってから、常に見てしまっていると気づいて、少し気まづく感じた。
「第五王子など重要ではないから、命を狙われる心配はない。一人の方が気楽で静かで集中できて良い。ただ身の回りのことはできないから、使用人の老女を置いている。老女は、元は俺の母親の使用人で、信頼できて良い」
淡々と話すアシュレイの横顔を見ながら、「そのような暮らしをしている屋敷に、俺がいていいのか」と聞くと、アシュレイは再び「問題ない」と笑った。
アシュレイの屋敷での暮らしは、他人の目がない分とても快適だった。アシュレイに命じられた雑用や、老女の手伝いをして日々が過ぎていく。魔法を使うこともない。とても快適な毎日に、デックは、村のことを気にかけながらも、ここでの暮らしが気に入り、ずっといたいと思い始めていた。
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