テラーノベル
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2人で向かい合って食卓につき、小さく「いただきます」と手を合わせて箸を取る。
まずはメインのハンバーグを箸で割り、一口食べてみることにした。
「ん……!めちゃくちゃ美味いなこれ」
「えへへっ、本当!?良かったぁ…っ!」
「本当に美味しいよ、純一。こんなに手の込んだものを作ってくれてありがとう」
俺が手を伸ばして純一の頭を優しく撫でてやると、彼は心の底から安心したように
子供のような無邪気な笑みを浮かべた。
そのまましばらくの間
今日病院であった他愛もない出来事や、純一の職場の話などを交わしながら
穏やかな食事の時間を楽しむことにしたのだった。
だが、ひとしきり食べ進めたところで、俺の脳裏にふとした疑問が浮かんだ。
(平日の何でもない今日、どうしてこんなに手の込んだ豪華なメニューなんだ……?)
「……ねえ、純一。なんで急にこんなに豪華な晩御飯にしてくれたの?」
お茶を飲みながら何気なく聞いてみると
純一は一瞬、弾かれたように不思議そうな顔をして動きを止めた。
「えっ……?」
「今日って、なんか特別なイベントとか、記念日とかあったっけ?」
「……っ。あ、えっと……それは、その……ちょっと、ハンバーグが作ってみたくなっただけだよ!はは」
あからさまに視線を泳がせ、誤魔化すように不自然な乾いた笑い声をあげた純一。
その不穏な態度が心理士として少しだけ気にかかったが
仕事帰りの疲労もあり、俺は敢えてそこを深く追及することはしなかった。
すると、純一は箸を置き
潤んだ瞳でじっと俺を見つめながら、ぽつりと呟いた。
「りひとさん…さ、俺のこと、好き……?」
「え?急にどうしたの。もちろん、大好きだよ?」
俺が迷わずに即答すると、純一は微かに、どこか寂しげな笑みを漏らした。
それを見て、俺は特に深い意味はないのだろうと、ホッと胸を撫度下ろしていたのだった。
この後に待ち受ける絶望に、まだ何も気づかないまま。
◆◇◆◇
食事が終わり
後片付けも全て済ませて、リビングのソファで2人で並んで寛いでいるときだった。
テレビの音だけが静かに流れる室内で、突然
純一が俺の肩に、こつんと頭をもたれかからせながら問いかけてきた。
その声色は柔らかかったが
俺を見つめる彼の瞳の奥にはどこか張り詰めたような真剣な光が宿っていた。
「ねぇ、りひとさん。今日って、なんの日だと思う?」
「ん? なんだろ。…何かあったかな」
俺が記憶の糸をプロの冷徹さで手繰り寄せながら、正直に答えつつ
予定を確認しようとポケットからスマホを取り出そうとした、その瞬間だった──。
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