テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
次の日
カーテンの隙間から差し込む朝の光の中で
俺はベッドの上に寝転んだまま、スマホのメモ帳アプリを開いていた。
すぐ隣では、昨夜、甘い悲鳴を上げた純一を文字通り限界まで抱き潰した名残が漂っている。
純一はすっかり体力を使い果たした様子で、シーツを胸元まで引き上げ、ぐったりと深い眠りに落ちていた。
その規則正しい寝息を愛おしく見守りながら、俺は画面の文字を見つめる。
そこには一言、「純一の誕生日」とだけ書き残されていた。
カレンダーを見れば、その日はあと1ヶ月も先のことだ。
側から見れば気が早すぎると笑われるかもしれないが、彼に贈るための誕生日プレゼントは
数ヶ月も前から入念に吟味し、既に手元に用意してある。
当然、とびきりのサプライズで渡したいから
純一にはまだ一言も漏らしていない、俺だけの秘密だ。
(とにかく、当日は最初から最後まで、彼が世界で一番幸せだと胸を張れるような一日にしよう)
具体的なデートプランを脳内で組み立てながらスマホの画面を閉じると
背後で布団がもぞもぞと微かに動く音が静かな寝室に響いた。
「ん…っ、りひとさん…まだ寝ないの……?」
純一が長い睫毛を震わせながら、眠気でとろんとした瞳を半分だけ開く。
「ああ、ごめん。起こしちゃったね。もう少ししたら俺も寝るよ。純一はたくさん頑張って疲れたでしょ?身体もだるいだろうから、無理しないでゆっくり寝てて」
「えぇ…やだぁ。りひとさんとぎゅーして寝たい…離れるのさみしいよぉ……」
枕に顔を半分埋めて声をこもらせながら、純一がふにゃふにゃとした甘え声を絞り出す。
その無防備な姿に胸を射抜かれ
俺はスマホをサイドテーブルに置くと、再び温かい布団の中へと滑り込んだ。
「ふふ、仕方ないね。ほら、おいで」
「わぁい……!」
俺が両腕を広げると、純一は嬉しそうに顔を綻ばせ、俺の胸元へとすっぽり収まるように潜り込んできた。
その細い身体を壊れ物を扱うようにそっと抱きしめ、体温を分け合う。
来月の彼の誕生日に仕掛けたサプライズが、どうか大成功しますように──
そんな祈りを胸の内で唱えながら
俺は愛しい恋人の髪の香りに包まれてゆっくりと目を閉じた。
◆◇◆◇
それから1週間後
臨床心理士としての俺は、容赦のない激務の波に追われていた。
外来でのつきっきりのカウンセリング診療はもちろんのこと
週末に控えた地域の研修会の資料準備
専門誌に寄稿する論文の最終チェックなど
机の上に積まれたやるべきタスクは山積みだった。
純一も最近は職場での復帰プログラムが本格化してきたのか
会社で忙しそうに過ごしている様子だった。