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第一話:共学化の朝と、嫌な予感
「今日から、我が校は『私立黒咲学園』として新たな一歩を踏み出す!」
体育館に響き渡る校長の暑苦しい挨拶を聞きながら、俺——相沢タカシは小さくあくびを噛み殺した。
昨日までは泥臭い男子校だったこの学校が、今年度から急遽「男女共学」になった。殺風景だった校舎にはどこか甘い香水のような匂いが漂い、全校生徒の男どもは朝から落ち着きがない。無理もない、昨日まで野郎しかいなかった空間に、今日からは女子生徒がやってくるのだ。
「おいタカシ、見たかよ……? 掲示板の写真……全員モデル級の美少女だぞ……!」
隣に立つ親友のケンジが、顔を真っ赤にしながらひそひそ声で囁いてくる。鼻の下が信じられないくらい伸びていた。
「ああ、そうだな。……だけど、なんかおかしくないか?」
「は? 何がだよ! 天国だろこんなの!」
ケンジは興奮しているが、俺はどうしても胸のざわつきを抑えきれずにいた。
俺の家系は代々、神社を営んでいる。その血のせいなのか、幼い頃から霊感というか、「人の皮を被った怪異」のようなものの違和感を察知する変な体質を持っていた。
そして今朝、登校途中にすれ違った女子生徒たちから感じたのは、甘くて甘美な——しかし、どこか底知れない異様な「気配」だった。
「——それでは、新入生および転入生の着任です。拍手でお迎えください!」
校長の呼びかけと共に、体育館の重い扉が開く。
ゾロゾロと入ってきた女子生徒たちを見た瞬間、体育館中の男子生徒から「うおおおおっ!!」という怒号のような歓声が上がった。
黒髪ロングの清楚系、眼鏡をかけた知的な美少女、小柄で可愛らしいタイプ……どこを見渡しても絶世の美女ばかりだ。男子たちが一瞬で魅了され、目をハートにして骨抜きになっていくのが目に見えて分かった。
しかし、俺の目にはまったく違う光景が映っていた。
(……なっ、なんだよ、あれ……!?)
俺は思わず息をのんだ。
彼女たちの背後に、うっすらと揺らめく黒い影。頭からは小さな漆黒の角、腰からはハート型の尾が生えているように見える。そして、男たちを見つめるその瞳の奥には、獲物を品定めするような妖しい光が宿っていた。
サキュバス——夢魔。
人を惑わし、精気を吸い尽くす悪魔。
(嘘だろ……? 一人や二人じゃない……女子生徒、全員がサキュバスなのか……!?)
冷や汗が背中を伝う。
周りの男子たちはすでに重度の魅了(チャーム)状態に陥っており、ニヤニヤとだらしない笑みを浮かべて女子たちを見つめている。異常事態だと気づいているのは、特殊な耐性を持つ俺だけのようだった。
「以上で始業式を終わります。各員、教室へ移動してください」
式が終わり、ゾロゾロと教室へ向かう生徒たち。俺は頭を抱えながら、自分の教室である2年B組の扉を開けた。
「やあ、君が隣の席の相沢くんだね? これからよろしくね」
席につくや否や、声をかけてきたのは眼鏡をかけた黒髪の美少女だった。
彼女は優しく微笑みながら、俺の顔を覗き込んでくる。
(うわ、距離が近い……! っていうか、角が見えてる! つの!)
「……あ、ああ。よろしく」
俺が引きつった笑顔で返すと、彼女はふと不思議そうに首をかしげた。
「ふふ、なんだか緊張してる? ……でも、変ね。他の男の子たちみたいに、ぼーっとしてないみたい」
彼女の目が、キリッと妖しく光る。
細く美しい指先が、俺の制服の胸元にそっと触れた。
「ねえ……君、本当に『普通の人間』?」
耳元で囁かれた甘い声に、全身の毛穴が立ち上がるのを感じた。
男子校から共学化されたこの学校で、俺の平穏な学園生活は、初日から完全に崩れ去ったのだった。
コメント
1件
おお、これ面白いわ…! 冒頭から「全員サキュバス」って設定、持ってかれたわ。普通のラブコメかと思いきや、主人公だけが違和感に気づいてるっていう空気感がめっちゃ好き。隣の席の美少女が「君、普通の人間?」って耳元で囁くシーン、ゾクッとしたね。続きが気になる、次どうなるんだろ!🔥
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#ギャグ
梨本和広
6,467
桜咲かな
299
#学園