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『男子校が共学化したら女子が全員サキュバスだった件』
第二話:黒髪メガネの距離感と、放課後の罠
「……相沢くん? 顔色、すごく悪いけど大丈夫?」
隣の席の女子——名前は確か、白銀(しろがね)美咲——が、心配そうにこちらを覗き込んできた。
フレーム越しに見える紫色の瞳が、妖しい光を放っている。よく見ると、頭から生えた漆黒のツノが、髪の隙間からうっすらとチラついていた。
「あ、いや……なんでもない。ただ、ちょっと緊張してて」
「そう? ならいいんだけど……」
白銀さんはフッと艶やかな笑みを浮かべると、俺の耳元へ顔を近づけ、囁くように言った。
「何か隠し事があるなら、いつでも相談に乗るからね? 私、人の『秘密』を聞くのが大好きなの」
ゾクッと背筋に冷たいものが走る。
完全に勘づかれている。他の男子ならこの至近距離と甘い匂いで魅了(チャーム)され、一発で骨抜きになるところだ。俺は必死に理性を保ち、何事もなかったかのようにノートを開いた。
(危ねぇ……! 命がいくつあっても足りんぞ、この学校……!)
チラリと教室を見渡すと、地獄絵図が広がっていた。
男子生徒たちは完全に目がトロンとしており、女子たちの言うことなら何でも聞きそうな勢いだ。女子側も、男たちから漂う無自覚な精気(エナジー)を微笑みながら吸い取っている。
幸いにも、俺の家系ゆえの特殊体質のおかげで、サキュバスの魅了は直接肌に触れられない限り完全には効かないらしい。だが、正体がバレれば集団で襲われる危険性がある。
「よし、とにかく目立たず、無害なモブとしてやり過ごすんだ……」
俺は心の中でそう誓い、ひたすら気配を消して授業をやり過ごした。
そして放課後。
ホームルームが終わった瞬間、俺は鞄を掴んでダッシュで帰宅しようとした。
「あ、相沢くん。ちょっと待って」
「ぐはっ!?」
教室の出口で、白銀さんにすれ違いざまに袖を掴まれた。
「あのね、日直の仕事で生徒指導室までプリントを運ばなきゃいけないんだけど……一人じゃ重くて。手伝ってくれないかな?」
「いや、俺はこれから急用が——」
「お願い。ダメ……かな?」
上目遣いで、少しだけ潤んだ瞳で見つめられる。
断れば「正体に気づいているから避けている」と確信させれてしまうかもしれない。
「……はぁ。分かったよ、手伝う」
「ふふ、ありがとう。優しいんだね、相沢くん」
俺たちは誰もいなくなった夕暮れの廊下を歩き、奥にある資料室(旧生徒指導室)へと向かった。
夕日が校舎を赤く染め上げ、影が長く伸びている。静まり返った廊下に、二人の足音だけが響く。
「ここよ。中に入れてくれる?」
白銀さんが鍵を開け、俺が重いプリントの山を持って先に部屋へ入った。
その直後——
カチャリ。
背後で、重厚なドアが閉まり、鍵が施錠される音がした。
「……白銀さん?」
振り返ると、そこにいたのは先ほどまでの「清楚な眼鏡女子」ではなかった。
制服のボタンは少し胸元まで開けられ、頭からははっきりと二本の悪魔のツノが突き出ている。背中からは漆黒の翼が広がり、腰からはハート型のしっぽがゆらゆらと揺れていた。
「ふう……やっと二人きりになれたわね、相沢タカシくん」
彼女は眼鏡を指で少しずらし、獰猛で甘い笑みを浮かべた。
「さて、単刀直入に聞くわ。……君、私たちの正体に気づいているわね?」
逃げ場のない密室で、サキュバスの本性を現した美少女と二人きり。
俺の生存をかけた学園生活は、初日の放課後にして最大のピンチを迎えていた。
488
#ギャグ
梨本和広
6,467
桜咲かな
299
#学園
コメント
1件
第2話、一気に読んだよ! 白銀さん、清楚な眼鏡女子だと思ったらまさかの本性バレ展開でゾクゾクしたわ…。密室に閉じ込めて「覚悟しなさい」オーラがやばい。主人公の「モブとしてやり過ごす」作戦も序盤で瓦解しそうで、続きが気になりすぎる🔥 サキュバス学園もの、めっちゃ刺さるわ〜