テラーノベル
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「白梅や。お前歌は詠めるか?」
「業平様。この子は文字は書けますが歌はまだ……」
身支度を整えた業平と桂二人が、前に座り白梅を問い詰める。
「なるほどなあ。まあ、文字が書けるならよしとするか……」
「まあ、業平様!どうするおつもりで?!」
桂が食ってかかるが、業平はその剣幕を気にすることもなく頷いているだけだ。
白梅は、さっぱりわからない。それでも主人を前にしては口を挟むこともできない。
どこか落ち着きのない白梅に桂が気がついたようで、業平の袖をそっと引いた。
「ん?おお!すまぬ、すまぬ。実はな……」
業平は、宮中での自らの仕事を語ると、なぜか同僚の話を持ち出してくる。
「妻を亡くして幾年。やもめ暮らしの男がおってな。悪い男ではないのだが、どう思う?」
どう思うと言われても──。
やもめ暮らしは本人が望んだことなのか、それとも仕方なくなのか、それによって話は変わると白梅は思う。同時に、そんなこと自分に聞かれても返答のしようがないのだがと口ごもる。
「なあ?気になるだろ?」
業平が身を乗り出す勢いで、何か粘ってくるのだが、その意図が白梅には掴めない。
そもそも、この屋敷に召し抱えられてまだ日が浅い白梅が、主人と話すことなど言語道断なのだが、使用人の心内などお構いなしなのか、業平は執拗に白梅へ問いただしてくる。
「……業平様。そのように言われても白梅だって答えられませんわよ」
桂が助け舟を出した。
「ああ、少し気が急いていたな。つまりだ、白梅、お前のことをその男が気に入ったと白状したのだよ」
「へっ?!」
あまりに唐突すぎた。
白梅は、主人の前であるにも関わらず、驚きから素っ頓狂な声を挙げていた。
「はは、そうか、そうか。まんざらでもないか」
女房という立場上抗うわけにも行かず。白梅は桂をすがるように見た。
「まあ、悪い話ではないと思うわ」
「桂様……!」
勝手に話が進んで白梅は困惑している。まだ十五の白梅にとって、そのようなことは早いと思っていた。
いや、他人事だった。
「まあ、急な話だが、この縁組、私も悪くないと思うんだがなぁ。もしや、白梅、すでに約束を交わした男がいるのかい?」
「え?!や、約束?!」
#完全一次創作
たかはし もけ
717
はるか
5
生方詩
25,680
業平のあけすけな言葉に、白梅は焦り切る。
「そ、そのようなものは……お、おりません!」
身の潔白を疑われてはと、白梅はさっと頭を下げて告げた。
「なら、話は早い。明日は出仕の日。早速伝えておこう。歌の一つでもよこせと言っておくよ」
ははは、と業平は笑った。
桂も隣で、それが良いなどと呑気に言っている。
「業平様。歌といえば……、返歌をいかがいたしましょう?白梅では……」
在五の君に仕える女房が歌も詠めないとは問題だと桂が言い出した。
「うん、まだ白梅は若いから仕方ないと思うのだが?」
言うと業平は、桂を見た。
「お前がいるだろう?」
「と、申しますのは?」
「つまり、代筆だよ」
見初めた女から快い返事があったのだ。すぐにでも歌が届くだろう。今更、歌の指南を始めるのは遅すぎる。
業平は、少しばかり思案して、
「白梅の事は妹みたいなものだと言っていたではないか?頼んだよ桂」
そう呑気に言ったのだった。
コメント
1件
えっ、もう縁談の話?! 白梅さんまだ15歳でしょ…急すぎてこっちまで戸惑っちゃったよ。業平様は良い人っぽいけど、あのノリの良さは当時の人にはどう映るんだろうな。桂さんの代筆案には笑ったけど、白梅さんの気持ちを考えると複雑だわ〜。続きが気になる!