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蟹溝@プロフ必読
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次元の裂け目を潜り抜けた一行を待ち受けていたのは、光すら拒絶する死と破滅の極限領域――「theBanlands」だった。
空は禍々しい濃紫と血のような赤に染まり、大地には壊れたデータや歪んだコードの残骸が無数に散らばっている。
一歩踏み出すだけで、足元から不気味なノイズが這い上がってくる。
そこは、最高神Robloxによって「規約違反(TOS違反)」の刻印を押され、世界から切り離された者たちが流れ着く、絶望の監獄。
そして――。
「う……うおぉぉぉ……」
「我らを……消去した世界を……許さぬ……」
地の底から、無数の呻き声が響き渡った。
次の瞬間。
ズル……ズルズル……。
崩れたデータの山を掻き分け、無数の「BANされたゾンビ」が姿を現した。
赤い目を不気味に光らせ、壊れたコードを全身から垂れ流しながら、怨念に突き動かされるように一行へ押し寄せてくる。
「な、なんという数だ……!」
ビルダーマンが巨神のハンマーを構える。
「これほどの怨念が一斉に押し寄せてくるとは……!」
ドゥームブリンガーも大剣を抜き放った。
しかし、その横でテラモンは苦しそうに胸元を押さえていた。
「くっ……!」
神力の大部分を封印し、肉体を人間へと変生させている途中。
現在のテラモンにとって、このBanlandsの世界圧はあまりにも重かった。
立っているだけで、身体から少しずつ力が削られていく。
「テラモン様、お下がりください!」
ドゥームブリンガーが前へ出ようとした、その時だった。
「どけ」
低い声が響いた。
「……え?」
「お前らのヌルい攻撃じゃ、この怨念のコードは消せねぇよ」
一行の前へ、すっと影が躍り出る。
緑の「X」シンボルが刻まれたドミノ・クラウン。
テラモンから贈られた赤いケープ。
半透明の緑色の身体。
その奥で不気味に脈打つ黒い肋骨。
そして、全身から噴き上がる濃緑色と漆黒の炎。
1x1x1x1だった。
その手には、紫と緑の毒気を纏った巨大な剣――ヴェノムシャンク。
1x1x1x1は、迫り来るゾンビの群れを見てニヤリと笑った。
「歓迎してやるぜ……腐れゾンビどもッ!!」
そして――。
ドスンッ!!
ヴェノムシャンクを大地へ突き立てた。
「ズズズズズズ……ッ!!」
瞬間。
地面を這うようにして、濃緑色の毒が一気に広がった。
それは単なる毒ではない。
コードそのものを書き換え、侵食し、上書きする「バグ」。
Banlandsに漂う腐敗データすらも、その毒から逃れることはできなかった。
「ガァァァッ!?」
先頭のゾンビが悲鳴を上げる。
赤かった目が――。
緑色へ変わった。
「……?」
そのゾンビはしばらくフラフラと立ち尽くしたあと。
スッ。
1x1x1x1の前で、深々と頭を下げた。
「……え?」
ビルダーマンが固まる。
ドゥームブリンガーも固まる。
テラモンも固まる。
そして。
「オオオオオオオッ!!」
先ほどまで一行を襲おうとしていたゾンビたちが、一斉に1x1x1x1の背後へ回り込んだ。
「…………」
ビルダーマンが、ゆっくり口を開く。
「……今、何をしたんだ?」
1x1x1x1は得意げに鼻を鳴らした。
「見りゃ分かるだろ」
ヴェノムシャンクを肩に担ぐ。
「手下にした」
「雑な説明だな!?」
1x1x1x1はさらに毒を撒き散らした。
すると、押し寄せていたゾンビたちが次々と緑色へ染まっていく。
「オオオオオオオッ!!」
「オオオオオオオッ!!」
「…………」
ビルダーマンは呆然とその光景を眺めた。
「……ゾンビのコードを上書きして、味方に変えているのか」
「そういうことだ」
1x1x1x1はヴェノムシャンクを振り回しながら、次々とゾンビを支配していく。
敵だったゾンビたちは、いつの間にか彼の命令を忠実に聞く「緑の兵隊」へと変貌していた。
しかも彼らは、ただ戦うだけではない。
1x1x1x1はゾンビたちを巧みに配置し、テラモンたちの周囲に防壁のような隊列を作らせていた。
結果。
恐ろしい怨念が渦巻くBanlandsの中に――。
一本の安全な道が出来上がった。
「どうだ、バカテラモン!」
1x1x1x1が振り返る。
「見たか俺の力を!」
胸を張る。
「この俺様の毒にかかれば、BANされた怨念だろうが何だろうが、全員まとめて下僕だ!」
「すごいぞ、1x!」
テラモンの顔がぱっと明るくなった。
「まさか、お前の能力をこんなふうに応用できるとは……!」
そして。
テラモンが嬉しそうに手を伸ばした。
「よくやったな」
ポン。
1x1x1x1の頭に、手が乗る。
「…………」
数秒の沈黙。
「な、ななな……」
1x1x1x1の身体が、みるみる震え始めた。
緑色の半透明な肌が、赤紫色に染まっていく。
「何してんだバカテラモォォォンッ!!」
「えっ!?」
バッ!!
1x1x1x1はテラモンの手を勢いよく払い落とした。
「べ、別にお前のために道を作ったんじゃねぇからなッ!!」
「そうなのか?」
「そうだよ!!」
「ありがとう、1x」
「だから礼を言うなって言ってんだろぉぉぉ!!」
赤いケープを頭からすっぽり被る1x1x1x1。
「俺はただ! この薄汚ぇゾンビどもが視界に入るのがムカついただけだ!」
「なるほど」
「お前が人間になりかけて足手まといだから助けたとか、そんなわけじゃねぇからな!」
「分かった分かった」
「絶対分かってねぇだろその顔ぉぉぉ!!」
Banlandsに来てからというもの。
世界は相変わらず地獄だった。
空は赤黒く、大地は腐敗し、亡者たちが呻き声を上げている。
なのに。
なぜか一行の中心だけ、妙に騒がしい。
その様子を少し離れた場所から見ていたハックロードは、背中の棺にそっと手を添えた。
骸骨マスクの奥の眼差しが、ほんのわずかに柔らかくなる。
(……口ではあれほど悪態をついているというのに)
(あの子は、一歩たりともテラモンから離れようとしない)
(ゾンビたちの配置も、テラモンを守るように調整している……)
ハックロードは小さく息を吐いた。
(本人だけが、それに気づいていないのだろうな……)
そして。
「……まったく」
ハックロードの口元が、ほんのわずかに緩んだ。
「愛とは……実に不器用なものだ」
「聞こえてんぞクソ骸骨!!」
「……」
「今なんか余計なこと言っただろ!!」
「私は何も言っていない」
「絶対言った!!」
テラモンは思わず苦笑した。
だが、その笑みもすぐに消える。
ハックロードが、静かに前方を見つめていたからだ。
その先。
Banlandsの最奥。
濃紫色の空間が不自然に歪み、巨大な黒い封印領域が浮かんでいる。
あそこだけは、周囲の腐敗データすら近づくことを許されていない。
ハックロードは黒銀の大剣を握り締めた。
「……あそこだ」
その声には、先ほどまでのコメディじみた愛妻家ぶりはなかった。
「我が妻……ブライトアイズは、あの封印の向こうにいる」
テラモンが静かに頷く。
1x1x1x1もヴェノムシャンクを握り直した。
ビルダーマンは巨神のハンマーを肩に担ぎ、ドゥームブリンガーも大剣を構える。
そして。
ハックロードが大剣を高々と掲げた。
「行くぞ」
その声に応えるように、背後の緑色のゾンビ軍団が一斉に雄叫びを上げる。
「オオオオオオオオオッ!!」
1x1x1x1がニヤリと笑った。
「へへっ……」
ヴェノムシャンクを肩に担ぐ。
「ここまで来たんだ。嫁さんくらい、さっさと取り返して帰るぞ」
「……1x」
「な、なんだよ」
「ありがとう」
「…………」
1x1x1x1は顔を背けた。
「……うるせぇ」
だが。
その赤いケープの下から覗く口元は、ほんの少しだけ笑っていた。
一行は、1x1x1x1が切り拓いた「毒と絆の道」を進んでいく。
そしてついに。
絶望の監獄、theBanlandsの最深部。
すべての希望を拒絶する、巨大な封印の前へと辿り着いた。
その向こうには――。
ハックロードが何兆年もの間、追い続けてきた存在。
最愛の妻、ブライトアイズが待っている。
だが。
彼らはまだ知らなかった。
この世界の最高神が、すでに彼らの侵入を――認識していたことを。
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