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葉月はその青年、北原玲に見つめられ、何も言えないまま立ち尽くしていた。
玲は冷ややかな視線を向け、彼女の奇妙な服装に眉をひそめた。
「その格好、どこかの劇団か何かか?」
玲の言葉に、葉月はようやく口を開く。
「え、えっと…ここってどこですか?」
「ここは北原家の屋敷の前だが、そんなことも知らないのか?」
葉月はますます困惑し、周囲を見回した。確かに、どこかの豪邸の前に立っているようだが、ここがどこなのか全くわからない。
「大正時代だなんて、そんなわけ…」
「何を言っているんだ?さっさとどこから来たのか答えろ。」
玲の強い言葉に、葉月は焦りを感じた。今、ここが本当に大正時代なのかもしれないという思いが胸をよぎる。
「私は、未来から来たの…」
「未来?」
玲は葉月の言葉を信じられない様子で、一歩近づいてきた。その瞬間、葉月は彼の冷たい視線に圧倒され、言葉が詰まってしまった。
「ふざけたことを言うな。未来だと?そんな馬鹿げたことを信じると思うか?」
葉月は何も言い返せず、ただ玲の視線に耐えるしかなかった。
しばらくの沈黙の後、玲はため息をつき、ふと葉月の手元に目をやった。
「その時計…」
玲は葉月が手にしている懐中時計を見て、険しい表情になった。
「それは…どうしてお前が持っているんだ?」
葉月は驚いて時計を見下ろした。この時計が、どうやら何か重要な意味を持っているらしい。
「この時計は、もしかしてあなたの…?」
「俺の家のものだ。それをどうやって手に入れた?」
葉月はますます混乱したが、この時計が北原家と何らかのつながりがあることは明らかだった。
「待って、これは偶然手に入れたの。私は本当に何も知らない!」
葉月は必死に説明したが、玲の疑念は消えなかった。
「偶然だと?そんな話があるわけがない。何か目的があってここに来たんだろう。」
玲は冷たく言い放ち、葉月に背を向けた。
「ついて来い。俺の家で話を聞く。」
葉月はしぶしぶ玲の後を追った。大正時代の名家、北原家に足を踏み入れることになるが、この先どうなるのか、彼女自身も全く分かっていなかった。