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――氷の背で、紅が燃える――夜。
山間の村外れ。
鬼の気配は、濃い。
空気が重く、冷たい。
童磨:
「……この先だねぇ」
新人隊士:
「は、はいっ♡
氷柱様の後ろ、ついていきますぅ」
雪紅は少し離れた位置で、周囲を警戒していた。
雪紅:
「……散開しろ」
新人隊士:
「え〜?
でも、怖くてぇ……」
童磨:
「指示は聞いた方がいいよ」
新人隊士:
「……でも……」
ぎゅ、と。
童磨の羽織の袖を掴む。
雪紅:
「――離れろ!」
思わず、声が荒くなる。
新人隊士:
「ひっ……」
童磨:
「……」
そっと、袖を外す。
童磨:
「任務中だ」
新人隊士:
「す、すみません……」
だが、その直後。
――ズズ……ッ
闇の奥から、
“何か”が動いた。
童磨:
「……来る」
鬼:
「――ヒヒ……」
複数の気配。
強い。
雪紅:
「私が前に出る」
童磨:
「了解」
新人隊士:
「え、え……!?」
雪紅が一歩踏み出した、その瞬間。
新人隊士:
「ま、待ってくださいぃ!!」
――雪紅の腕を、掴んだ。
雪紅:
「……っ」
鬼の気配が、一気に跳ねる。
童磨:
「……離して」
新人隊士:
「で、でも……!」
雪紅:
「今すぐ、手を放せ」
新人隊士:
「だってぇ!
私一人になるの、嫌で……!」
次の瞬間。
――鬼が、飛び出した。
雪紅:
「っ、伏せろ!!」
だが。
新人隊士は、動けなかった。
新人隊士:
「きゃああああ!!」
鬼の腕が、振り下ろされる。
氷の呼吸。
一瞬で距離を詰め、鬼の動きを止める。
だが――
雪紅:
「……!」
別方向から、もう一体。
雪紅が斬り込もうとした、その刹那。
新人隊士:
「氷柱様ぁ!!」
また、背中にしがみつく。
童磨:
「……っ」
動きが、一瞬遅れた。
雪紅:
「童磨!!」
紅の呼吸が閃く。
鬼の首が、落ちる。
静寂。
血の匂い。
雪紅は、震える手で刀を収めた。
雪紅:
「……何をしている」
新人隊士:
「ご、ごめんなさぁい……
怖くて……」
雪紅:
「任務を、何だと思っている」
新人隊士:
「で、でも……
氷柱様がいれば、守ってくれるって……」
その言葉に。
童磨の表情が、完全に消えた。
童磨:
「……それは、違う」
新人隊士:
「え……?」
童磨:
「俺は“君を守るための盾”じゃない」
一歩、距離を取る。
童磨:
「雪紅と同じだ」
雪紅:
「……」
童磨:
「柱は、誰かの命令で感情を使う存在じゃない」
新人隊士:
「……っ」
童磨:
「さっきの行動で」
声が、低くなる。
童磨:
「君は、雪紅を危険に晒した」
雪紅:
「……童磨」
童磨:
「言わせて」
新人隊士:
「……ご、ごめんなさい……」
涙が、零れる。
童磨:
「泣いても、取り消せない」
新人隊士:
「……っ」
童磨:
「次、同じことをしたら」
刀に、手をかける。
童磨:
「俺は君を“斬らずに”拘束する」
新人隊士:
「……ひっ」
雪紅:
「……もういい」
童磨:
「雪紅?」
雪紅:
「任務を続ける」
新人隊士を一瞥する。
雪紅:
「……私の視界に、入るな」
新人隊士:
「……はい……」
距離が、はっきりと生まれた。
夜の中、
紅は静かに燃え、
氷は完全に線を引いた。
そして雪紅は気づいてしまう。
――自分が、
どれほど童磨の行動に、心を揺らされているかを。