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「お嬢様の他の秘密など、戸棚のおやつくらいしか──」

「ギルバート、それは私の楽しみよ。手を出すことは許さないわ。そうじゃないのよ、私のとっておき。まだ誰にも見せたことのない私の能力」


この世界では魔法も当たり前にあるけれどそれとは別にユニークスキルというものを持つ者がいるわ。それは一般的に誰でも使える可能性のあるスキルとは違ってその人だけの特別で強力なものが多いわ。


「私の『夢想の住人』は私が望む結果を実現させるスキルよ」

「お嬢様それは!」

「そうね、何でもありよっ!」


ズビシッとギルバートを指差してキメてやったわ。


「これでこの部屋から出るも入るも自由。私がその気になれば道なんてものも不要なのよ。そして誰もいない夜の街をジョギングし続ければ痩せるというもの」

「お嬢様、何でもありでしたらそのスキルで痩せればよろしいのでは?」


ギルバートは単純に疑問を投げかけてきたわね。冷静な彼からすれば当たり前すぎる疑問で私がそこに気づいてないのではないかと疑っているみたい。


「ギルバートもそう思うでしょ? それはすでにやったわ、うちの猫で!」

「なんとっ!」


本当に意外だったみたいで驚くギルバートが少しムカつくわね。


「私と一緒にくつろいでいた“ミケ”は同じように太っていたから、私でやる前に試してみたのよ。そしたらあのこ途端に死ぬかと思うほどの汗をかきながら痙攣しだして、上からも下からも汚物を垂れ流して猫トイレがドロドロの液体に沈むほどの量を出し続けてそんな状態を半日かけて痩せたわ」


「ある日突然痩せていたと思ったらそういう事でしたか。それにしてもやはりそのスキルで出来るのではないですか。それでよろしいのでは?」

「無理よ。そんなの目の当たりにしたらどうなるか。私の強烈なトラウマになったわ。あれからミケを撫でることさえ躊躇うようになったもの。自分に対してなんて恐ろしくて出来ないから地道にジョギングをするわ」

「身勝手が過ぎると思うのは私の狭量さでしょうか」


ギルバートも納得してくれたみたいね。だからここからが本題よ。


「という訳で私はこれから外に出てジョギングをしてきますわ。あなたは誰かがこの部屋を訪ねてきたら追い返してちょうだい」


ギルバートはザ・プロフェッショナル。私の要望に応えないことなんてないわ。これで留守も守れるわね。


「お嬢様をお一人でなど送れるわけがございませぬ。私もついていきましょうぞ」

「あなたが残らないとこの部屋の留守を守れないわ」

「ご心配には及びませぬぞ、お嬢様。これ、こちらへ来なさい」


ギルバートが天井に向けて声を掛けると、オカメのお面をした女の人とひょっとこのお面をした男の人が音もなく現れましたわ。


「このような事もあろうかと、私とお嬢様の声真似を得意とする影武者を用意しておりました。ですからこの部屋にお嬢様がいなくとも誰も不審には思いませぬ」

『そう、不審には思いませぬぞよ』

『そうですわ。アタクシは絶世の美女ですわ』




「──さすがギルバートね。ザ・プロフェッショナルは伊達じゃないわね」


声音だけは似ている2人の話し方とキャラ作りに一抹の不安を覚えるけれど、まあいいかしら。


「では、ギルバート。行きますわよ──『瞬間移動』」


こうして籠の中の鳥はその扉を開ける事なく夜の街へと飛び出しましたのよ。

ああ、憧れの麗しき令嬢はチートなお転婆姫

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