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八雲瑠月
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「……一話から胸糞悪くなるあらすじね……これは思った以上に救いようがない話になってない?」
「どういうことだね?」
友美の言葉に理香が首を傾げる。
「……どういうことって? 自覚がないなら、本当にたちが悪いわよ! 周りに道徳を重んじる人がいないって、どういう事よ! 三ページ目のあらすじの一章部分とか!」
友美がマウスを操作し、三ページまでスクロールさせ、あらすじの一章部分にカソールを合わせる。
「この話は王が悪徳なら、主人公のタケルも悪役になっているのよ! タケルは異世界がゲームのような世界だと思っているせいか、民家に押し入ったり、接収行為? 壺を壊して、国民が隠していたお金を奪い取ったり、タンスから衣類を奪ったり、民家の宝箱から武器や防具などを強奪! これはつまり、RPGゲームの再現でもしてるの? コメディ的な要素には見えないし。この書き方だとタケルは非情な人間で、ゲスに見えるわよ」
「ふはははっ!? 君が何を言うかと思えば……そんな事かね。これは歴史上、様々な世界で接収は行われている事だよ。豊臣秀吉の刀狩りから、第二次世界大戦の日本の金属類回収令、ナチスによる美術品の接収、どの国でも独裁者や王族によって平民から美術品や食料を接収していたのだからね。これは良いリアリティーのある作品だと思わないかね? 友美君」
「悪役を主人公にしているピカレスク小説っていうのは聞いたことがあるけど、この小説の話に出てくる登場人物のほとんどが悪に思えるんだけど」
「悪人ばかりか……確かにね。私的には悪というよりも、皮肉の話を書いているつもりだったのだけどね……」
余裕を見せていた理香が何度かタブレットPCをスクロールさせ、キャラ設定を見直しているのか、言葉を詰まらせる。
「主人公が悪役でも怪盗や子供向けのアニメに出てくる子悪党三人組のような、多少憎めないキャラだったら、希望を持てる話の内容だったわ。でも、あらすじの一章のヤミーダの酒場を見ると、主人公に好感が持てるポイントがどこにもないのよ。ヤミーダの酒場で奴隷商から戦士、僧侶、魔法使い、弓使い、盗賊、踊り子、吟遊詩人、召喚士を購入。それが全て少女で、ハーレムのようにはべらすだけならまだしも、無給で働かせ続け、モンスターが出たら操りの首輪で命令させろ、ガンガン戦えという命令を出す。奴隷商から買い取った人材を持っている衣服や武器や防具を奪い取って、戦力として能力が低い人材を奴隷商に売り、また別の人材を奴隷商から買う行為を繰り返しているのよ。しかも、召喚士の精霊までに手を出して、戦力外の精霊を精霊石にして、武器や防具の素材にする! 召喚士メフィの精霊友達、フェアリーが可哀想でならなかったわ! これもRPGゲームの皮肉ってわけ?」
友美は言いながら、説明している一章部分の文字をカソールに合わせ、批評を書いたルビを表示させた。
「確かにRPGゲームの皮肉だがね。状況によっては操りの腕輪で命を大事にする命令も行使できるし、いくら奴隷でも無駄に命を落とさせる事はしない。一応は中世時代の世界観に設定しているから、奴隷なんてごろごろいる世界さ。それに奴隷といっても罪人や戦争で負けた捕虜や別種族がほとんど、罪を償う為にやっているなら、まともだと思うのだがね。まあ、タケルが全て女性の兵を奴隷で雇ったのは性的欲求かもしれないが、エロス君ほどの描写はしないが、全員で一緒に同じベッドで寝るぐらいはするだろうね。精霊を石にする過程はコメディ的な描写を考えていたのだがね」
理香は冷淡に言う。
「長年連れ添っていた精霊だけに、石になって素材になるのは笑えないわよ! それでもタケルは仲間の命を大事に思っている訳ね。さらに酷いのは敵に対しての扱いよ。タケルは二章のあらすじで、無抵抗のゴブリンの集落を襲って、鎧や剣、金品、その施設を奪い、喋れる相手、リザードマンに対しては殺した後、皮や牙、爪を剥ぎ取り、その集めた武器、防具、金品をよろず屋に売り払ったり、剥ぎ取った素材を武器屋や防具屋で加工しているわよね? 明らかに人道的ではないわ!」
理香はふんふんと鼻歌を歌うのに対し、友美は声を荒げて、二章のあらすじにスクロールさせ、ルビの批評の文を表示させる。
「そうだね。だけど友美君、これは人間と魔族との戦争なのだよ。君も巨大ロボットの戦争物語が好きなら分かるだろ? 奪いもすれば、奪われるもする。戦争において領土を侵略し、物品や金品を強奪するのはどの世界の時代においても当たり前の行為だよ。戦争の為には武器や防具は必要だし、資金も必要だ。素材の剥ぎ取りに関してだって強い生物を殺して、物に加工するのは原始時代から様々な部族がやってきた事だ。毛皮、カバンやミンクのコート、革財布、襟巻き、革ジャン、楽器、様々な哺乳類の動物で加工されている訳だが、まさかそれが可哀想で使えないなんて言う者はそんなにいないと思うのだがね」
「それはつまり、敵モンスターから出るドロップアイテムの皮肉、つまりリアリティーを持たせた話にしたかったのなら、ここまで酷い物語はないわね。異世界に来た人間がいきなりこんな非情な行動をとれると思う?」
友美の問いに理香は笑みを浮かべる。
「友美君、私は全ての人間が非情な行動をとれると思っているのだよ。例えば、君があるニュースを見た時。紛争の原因である独裁国家に平和的な国が一方的に攻められ、ミサイルや爆弾で無差別に殺される民間人を見た時、君はこういった感情を抱くはずだ。この人達を助けてあげたいと……君が特別な力を持っていると言われ、その国に協力を求められたら、何かしらの助力をするはずだ。もしかしたら戦争に赴いているかもしれない。それなりの寄付をするかもしれない。しかし、結局は君がミサイルを撃つ装置を使えば、家族を持つ敵兵、女性兵、少年兵、それらの死体はバラバラになってしまう。お金の寄付に関しても、ミサイルの軍資金になるかもしれない。逆に独裁国家の軍人がいくらミサイルや爆弾で殺されたとニュースに流れても、なんとも思わないだろう。どちらもミサイルや爆弾で惨殺されて死体はバラバラ、同じ残虐行為なのは変わらないのだよ」
「はっ? わたしは人殺しの覚悟や強大な力を持つ爆弾を使う過程の話をしているんじゃないわ! 殺した後のオーバーキルの話をしているのよ! 盗みや人を殺した事が無い一般人の感性で殺した後の死体の皮を剥いだり、略奪するような行為ができるのかって、聞いているのよ!」
思わず友美が長机を叩き、理香を睨むように見る。