テラーノベル
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嘔吐表現入ります。
(深澤視点)
「お疲れ〜!!」
「あー…早く帰りてぇ……」
「この後予定空いてる人〜!!」
「さっきのここさ、ちょっとミスった?」
「誰か俺のリップ知らん?」
「…………」
みんなの声が、すごく遠くに聞こえる。
身体が、ドロになったみたいにソファに沈み込んでる。
さっきまで、いっぱい踊って歌えてたんだけどなぁ…
「………か……」
早く、帰りたいなぁ…
そのまんま、ベッドに潜り込んで、さ…
「……っか…?」
今日はもう仕事ねーし…
明日は…オフ、だったっけ…?
「ふ……か……!」
いや…違うか。
明日も、丸山さんに、呼ばれてたんだ……
「ふっか!!」
「……っ!!あ、れ…?あ、阿部ちゃん?」
「大丈夫?みんな、もう帰っちゃったよ?」
阿部ちゃんの言うとおり、周りにはさっきまで騒いでたはずのみんながいない。
阿部ちゃんだって、もう帰る準備万端で…
それに比べて、俺はまださっきのライブ衣装のままで…
どれくらい、時間経ってたんだろ…?
時計を確認すると、楽屋に戻ってきてから30分以上は経ってる。
嘘だろ…俺、ずっとぼーっとしてたの?
30分も…?
「ふっか、明日オフだったよね?」
「え…うん、そう、だけど…」
「今日は俺の家泊まってきなよ。」
「………ぇ……?」
「ほら、衣装もう脱ごっか。1人で脱げる?手伝おっか?」
「ぬ、脱げるし…で、でも、待って!」
阿部ちゃんにばんざいさせられそうになるのを必死に止める。
それに、なんで急にそんな……
「……そのさ、阿部ちゃんも明日朝早くから仕事でしょ?俺、もうちょいかかるから先帰りなよ。」
このあとシャワーも浴びたいし、阿部ちゃんに申し訳なさすぎる。
俺のことは気にしなくていいし、自分のことを優先して欲しい…
「だめ。俺もここで待ってるからさ、早くシャワー浴びてきな。」
「う……」
だめだ。
この目の阿部ちゃんは、何があってもここにいるやつだ…
しょうがないし、早めにシャワーを浴びてきちゃおうか…
「よし、いこっか。」
「ごめんね、遅いのに…」
シャワーを早めに済ませて、待っている阿部ちゃんのことを意識しながら早めに着替えてメイクを落とした。
阿部ちゃんのおかげで、いつものぼーっとしちゃう無駄な時間がないから、俺からしたら早い帰りだと思う。
そのまま阿部ちゃんの車に乗せられて、暗い道路を走ってく。
「……阿部ちゃん…その、俺の家まででいいからさ。さすがに、阿部ちゃんの家には泊まれないよ。」
「………本当に?本当に大丈夫なの?」
「うん、大丈夫だよ。」
心配そうに阿部ちゃんに問いかけられてる。
大丈夫、俺は大丈夫だよ…
まだ、大丈夫だからさ…
「……ふっか、最近ちゃんと食べてる?」
「…………ぇ?」
「細くなったよね。照も言ってたよ、ふっか軽くなったってさ。」
「そ、そうかな…?最近、き、鍛えてるからだよ…!」
やばい、照にバレてたんだ。
いつだろ?
別の撮影とかで持ち上げられたとき…?
確かに、最近は全然食べれてない。
最近は、『CUT OUT!!』の撮影がない日も呼び出されている。
場合によっては、すんごい長引いちゃって…
夜ご飯食べる時間なんてないし…そもそも、食欲なんて湧かないんだよな……
………どうせ、食べても吐き出しちゃうし……
「せめてさ、ご飯だけは食べてってよ。……みんな、ふっかのことが心配なんだよ。」
「……………い、や…うん…ありがとう。」
ここで断ったら、余計心配されるよね。
ここは、阿部ちゃんに少し甘えてみようかな。
……せめて、吐かないようにだけがんばろ。
「………ここでいい?」
「うん。阿部ちゃん、こんな遅い時間にありがとうね。」
「全然いいよ。明日はオフなんだし、ゆっくり休みなよ。」
「……………うん、ありがと。」
「何かあったら連絡ちょうだいね。じゃあ、おやすみ。」
「おやすみ、阿部ちゃん……」
阿部ちゃんの家で少しご飯を食べて、ついでに明日の朝ご飯まで作ってもらっちゃった…
食欲がない俺のことを気遣ってくれたのか、ご飯は少なめに、でも健康に良さそうなご飯。
久しぶりに身体も喜んでた気がする。
本当は早く寝たいけど…
寝たら、明日が来ちゃう…
震える手でスマホのLINEを開く。
『明日、13:35』
ほんとに、その一言だけ。
でも、その意味を俺は知ってる。
多分、明日は長いんだろうな……
最近、さらに行為はエスカレートしてる…
「………ぅえ……」
寝ようとして、ベッドに身体を預ける。
でも、身体が押し付けられる感覚であれを思い出す。
気持ち悪い…
ふかふかのベッドのはずなのに、固いマットに感じる。
空気清浄機だってあるのに、少し埃被った感じもする。
身体が、脳が…
もう、忘れられない……
気持ち悪い…すごい気持ち悪い…
ベッドから降りて、ふらふらした足取りでトイレに向かう。
今日も、いっぱい吐いちゃうのかな……?
せっかく、阿部ちゃんからご飯食べさせてもらえたのに…
しんどい…
「う゛ぅ……ぅえっ…おえ゛……」
ほんと、最悪だ………
(丸山視点)
あの契約の日から、深澤くんは呼べばすぐに来てくれる。
やっぱり、深澤くんは優しい子なんだ。
俺の“お願い”を断れない。
最初に見た時からわかってた。
白くて、細くて、従順そうな瞳をしてた。
愛想よく笑ってはいるみたいだけど、多分内心ビクビクしてた。
ああいうのは、すぐわかるよ。
契約が始まった日から、「深澤くん」って声をかけた時、あの子はちゃんと目を見てなかった。
………あれは、拒否じゃない。
“服従のサイン”だ。
最初は、頑張ってる深澤くんに“ご褒美“としての仕事だった。
実際、彼はどんな内容であろうと頑張って応えてくれる。
他のスタッフは彼の頑張りと魅力に気付いてない。
だから、俺だけはその頑張りを認めてあげる。
………最初は、ね。
気づいた時には戻れなくなってた。
深澤くんは、俺の言うことをなんでも聞いてくれる。
仕事っていう飴を差し出せば、すぐに顔色を変えて俺の指示に従ってくれる。
もちろん、拒否権なんて与えない。
俺が、他のメンバーに手を出すわけなんてないのに…
名前を出すだけで抵抗できなくなっちゃうもんね。
そういう、仲間想いで優しいところ、俺はすごい好きだよ。
「…………」
倉庫の扉の開く音がする。
ほら、やっぱり来てくれた。
なるべく静かに開けたみたいだけど、ここは古いし、人もいないから整備もあんまり整ってない。
だから、入ってきたらすぐわかるんだよ。
俺は、笑顔で深澤くんを見る。
すごい、怯えた表情……
可愛いなぁ…
最近は、深澤くんの笑顔を見る機会が少なくなった。
どうしてだろう?
以前よりも多くの時間を共に過ごしてるっていうのに…
最近の深澤くんのことを見てて思う。
撮影で指示された時以外は、ほとんど笑ってない。
あ、でも、作り笑いはいっぱいあるよね。
ほら、名前を呼んだ時、頑張りを褒めてあげた時…
「………あ、りがとう…ございます…」
こうやって、作り笑いを浮かべてくれる。
この笑顔、本当に好き。
俺の、俺だけのために作ってくれる、世界で1番可愛い笑顔。
「じゃあ、はじめよっか。」
俺が毎回こう言うと、深澤くんの笑顔が暗くなる。
でも、俺はその顔も好きだよ。
なんなら、その怯えた表情、歪んだ引き攣り笑い、震える声…
そっちの方が、俺には輝いて見える…
だって、その表情は俺にしか見せないんでしょ?
触れた時に強張る身体。
頬を撫でた時にぴくりとはねる睫毛。
拒否してるのに、素直に反応しちゃう身体。
礼儀は正しいから、震えながらもありがとうございますって返してくれるとこ。
……全部、俺だけのもの。
誰も知らない、俺だけの深澤くん。
ねぇ、深澤くんさ。
……俺のこと、ちょっとは好きでしょ?
俺は、君にとっての特別なんだよ。
俺がいなきゃ、君たちは今人気が上がってない。
ここ最近仕事が増えたのは、全部俺のおかげでしょ?
……なぁ、最近撮影で挨拶しねぇよな?
俺に、声かけねぇよな?
何避けてんの?
メンバーと一緒にいる時は、俺のこと避けていいと思ってんの?
駄目だろ?
もっと、もっと“しつけ“してあげないとな。
俺だけの、深澤くんに……
コメント
3件
ガチ大好きです✨️ 次回も待ってます!
あー…読んじゃった、この第4話…(´;ω;`) 深澤くん、もう限界近づいてる感じするね…阿部ちゃんの優しさが逆に沁みる。ご飯食べさせてもらっても、結局吐いちゃうの辛すぎる…。丸山さんの「しつけ」って言葉がすごく重い。深澤くんの心が壊れていく様子がリアルで、胸がぎゅってなったよ。夢花さんの描写、丁寧で好き。
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kaede🍁
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