「と、いうことで、遼《りょう》国の王を、ご招待したいと思うのですが、皆様、いかがでしょう」
席に付く、王、重鎮達は、ポカンと、している。
閣議の最中に、華蓮《かれん》が、乱入してきた。そして、数々の混乱の原因を作ってしまった責任を取ると言い出したのだ。
「これは、私にしか出来ない事なのです。つまり、落とし前と、いうやつですか?兄上、使い方は、合っているかしら?」
「へっ?!」
いきなり振られた、斉令《さいれい》は、
「陛下、いかがなさいますか?」
と、父に振り返して、逃げ切った。
「そうだなあ、その手があったな」
王は、集まる重鎮達を、しかと、見渡し、言ったのだった。
──そして、この一声《ひとこえ》は、遼国の王に伝えられた。
玄国《げんこく》の姫、華蓮樣主宰の茶会に招待致したく、来訪されますように──と。
「それにしても!」
「そうですよ!」
「閣議に乱入なんて!無茶すぎます」
腹心達の言うことなど、聞く耳もたずで、華蓮は、山積みにされた書状に、目を通している。
「ねえ、何なのかしら、この書状。まるで、記録だわ。今日は、どうのこうの、と、そして、最後には、私と一緒なら、さぞや楽しかっただろうに……ですって」
「華蓮樣!お聞きになっておられますか?!」
「ほら、皆、見てごらんなさいな」
華蓮は、怒る三人へ、書状を手渡した。
「あらまあ」
「なんて、厄介な」
「果たして、何を記されているのか、お分かりになっているのかしら?」
三人は、呆れ顔を隠せない。
「この方が、来られるのですか」
「何てこと」
「どうやってお相手するおつもりで?」
「そうなの。王でありながら、ここまで、空気がよめないなんて!そこでね?」
あー!それは、無理ですよ!と、手を貸して欲しいと願う華蓮の言葉を、三人は、即、突き返した。
──こうして、華蓮主宰の茶会なるものが開かれる日が、やって来た。無論、相手を呼び寄せる方便である為、特に支度をすることもなく、王の到来を待つのみだった。
「ですが、華蓮樣は、着飾らないと!」
「ええ!華蓮樣の方が、格上なのですから」
「とにかく、圧倒させなくては、いけません!」
身支度を整える傍《かたわら》で、ナスラ、インドク、マヤの腹心三人組は、支度係の侍女に、あれこれ指示をだしている。
「いや、待って!」
「あっ!」
「そうですわ!着飾り過ぎて……」
「ねえ、どうしたの?」
顔をしかめる三人に、華蓮は、何事かと問い詰めた。
「相手に、惚れらてしまいますっ!!」
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