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#ほのぼの
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「……でも、まだまだ行った事がない所が多いので、楽しみですね」
あんまり塩対応していても可愛くないと思って、素直に言ってみると、涼さんはパァッと表情を輝かせる。
「でしょ? 世界中、いい所が沢山あるよ」
そのあとも彼は、丁寧に足やふくらはぎをマッサージしてくれる。
本当に美形で何もかもに恵まれている彼に、こんな事をさせるのは忍びないけれど、これも彼の愛情表現の一つなんだろう。
……多分、今まで彼はこうやって女性に尽くした事がないから、嬉々としてやっている。
……と思おう。
……というか、何か感想を言ったほうがいいんだろう。
「……キ、キモチイイデスヨ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、どうして無表情のカタコトになるの?」
「ウマイデスネ。サスガデス」
涼さんはピタッと動きを止め、私を見つめてくる。
……な、なんだろう。怒らせちゃったかな。
焦りはすれども、自分としても素直に表現する事ができない。
エッチの最中も「気持ちいい」というのが恥ずかしくて堪らないし、「ありがとう」は普通に言えるけれど、彼に何かをしてもらって「好い」と思った感情を伝えるのが難しい。
これが涼さんでなければ、思った事を何でも口にしていただろう。
けれど彼は私が好い反応をすると、思っている百倍ぐらいの喜びを表すので、それを受け止めきれずにいる。
言うなれば、私は普通のレシーブで返しているのに、涼さんは毎回超強力バックアタックで吹き飛ばしてくる感じだ。
練習すれば受け止められるようになると思うけれど、まだまだビシバシしごかれている最中だ。
彼がジーッと見つめてくるので、私も見つめ返してしまう。
しばらく二人ともそのままになったあと――、私からパッと目を逸らした。
「駄目だーっ! 顔がいい!」
「やったー! 勝った!」
私が両手で顔を覆って横を向いた傍で、涼さんはなぜか拳を突き上げて勝ち誇っている。
「~~~~、なんなんですか、もう……」
「ロボ子化した恵ちゃんを、元に戻すにはどうしたらいいかな、って考えてたんだけど、意外とシンプルな方法で戻ったね」
「ぐぬぅ……」
「で、顔がいい?」
彼は自分を指さし、にっこり笑う。
「いいに決まってるじゃないですか! 人間国宝ですよ」
「恵ちゃんにそう思ってもらえると、嬉しいなぁ。でも、恵ちゃんもさっき俺を見つめていた時、猫みたいで可愛かったよ」
「猫はいいですから……」
はぁ……、と溜め息をつくと、「可愛いっ」と抱き締められた。
(……結局こうなってしまう)
涼さんはご機嫌でチュッチュッと私の頬や額、唇にキスをし、頬ずりしてくる。
さながら、大型犬が尻尾を振って顔を舐めてきているようだ。
「……恵ちゃん。このままニュージーランドにも行こうか」
「駄目です。帰って働かないと」
「のし掛かる現実」
彼は私の肩口でガックリと項垂れる。
「……恵ちゃんって意外と勤勉だよね」
「給料をもらうためには、しっかり働かないとなりませんから」
「……俺と結婚したら、働かなくてもいいよ?」
涼さんは顔を上げ、私を見つめて囁いてくる。
けれどジーッと彼を見つめ返すと、「駄目かー……」とまた項垂れた。
「結婚したら毎日、『会社に行け』って涼さんのケツ叩きしないとなりませんね」
「あはは! 恵ちゃんにケツ叩きされるなら、張り切って出社しちゃうな」
「意外とM?」
「見るからにMでしょ~。恵ちゃん限定だけど!」
「…………ドSのくせに…………」
横を向いてボソッと呟くと、「ん~?」とニコニコ笑顔の鬼畜大魔神が頬ずりしてくる。
「ああ~! もう! 涼さんといると気持ちが休まらない。ずっとドキドキして、翻弄されて、いつもの私に戻れない」
両手で顔を覆ってドサッとソファに横になると、彼は私の両脚を自分の膝の上にのせ、片手を座面につけて覗き込んでくる。
「……そういうの、嬉しいんだけど。……でも恵ちゃんは自分のペースを崩されるのが嫌い?」
「……嫌い、とは厳密に違いますけど、落ち着かないです。……恋愛ってマジでパワー要りますね。……しんどい」
溜め息をつくと、彼はサラリと私の髪を耳に掛けて顔を露わにする。