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「これは、私もナビゲーターではなくプレイヤーになったという事ですわね。突然の変化で驚きましたが、不思議な事ではありませんわ、元々ナビゲーターという役職はテストプレイ期間のみの特例措置なのですから」
驚くちんすこうと愛玉子に対し、すぐに落ち着いた様子で説明するサーターアンダギー。二人もそうなのかと納得した。考えてみたらナビゲーターでもプレイヤーでも大勢に影響はなかったのである。
「ところでスキルは?」
未だに最初に憶えていたタックルと宇宙船を直した修理しかスキルのないちんすこうがサーターアンダギーのスキルを尋ねた。
「そうですわね、何か便利なスキルを勝手に覚えている可能性がありますわ。ええと……」
サーターアンダギーがスキル欄を確認すると、そこにはこう書かれていた。
『恫喝』
「なんて読むの?」
複雑な表情をしているサーターアンダギーに無邪気な顔で質問するちんすこう。愛玉子がニヤニヤしながらかわりに答えた。
「どうかつだよ。人をおどして怖がらせるスキルだ。宇宙海賊にはもってこいなスキルだな」
「おおー!」
「おおー! ではありませんわ!」
サーターアンダギーはちんすこうを恫喝した。
「よし、その調子だ!」
頭を抱えるサーターアンダギーをよそにこれからの行動を話し合う二人。切り替えの早い海賊達である。
「それじゃあこれからどうしようか?」
「まずはサーターアンダギーの宇宙船をゲットしないと」
プレイヤーは自分用の宇宙船を持つことができるので、当然サーターアンダギー専用の宇宙船も入手できるはずである。それを探しに行こうという主張である。ちんすこうにしては着眼点が良い。
「それは問題ありませんわ。この星まで来ているプレイヤーは何らかの理由で宇宙船をロストしても代わりの宇宙船を手に入れられるようになっております。デフォルトシップ(※初期状態の宇宙船)なら拠点ですぐ入手できるのですわ」
そう言って空中に呼び出したパネルを操作すると、三人の前に新たな宇宙船が出現した。
「ふむ、非常事態といってもゲームシステムはすべて正常に動いていますわね」
「なら、次にやる事は一つだ」
出現した宇宙船を見て満足気に頷くサーターアンダギーの肩に手を置き、愛玉子が自信満々と言った顔で声をかける。その様子にちんすこうも頷き、二人で声を合わせて次の行動を宣言した。
「「宇宙船に名前を付けよう!」」
「……まあ、いいですわ。この非常事態に対して今の私達が出来る事はありませんし、ゲームを楽しんでいた方が気もまぎれるでしょう」
ため息をつき、サーターアンダギーも宇宙船の名前を考えるのだった。
一時間後。
「決まったよ!」
ちんすこうが宇宙船の名前を決めたらしい。サーターアンダギーの方は五分ぐらいで決まり、ちんすこうが名前を決めるまで愛玉子と改造の準備をしながら待っていた。
「おっ、とうとう決まったか! どんな名前にしたんだ?」
愛玉子が目を輝かせ、サーターアンダギーは呆れ顔で彼女の発表を聞いている。
「ふっふっふ、この子の名前は『スーパーウルトラデラックスハイパーギガンティックファイアー号』だ!」
「ファイアー号ですわね。私の宇宙船は『マジパン』ですわ」
ちんすこうのやたらと長い命名を軽く流し、自分の宇宙船名を告げるサーターアンダギー。
「マジパンって何?」
「ケーキの上に乗っているお人形さんですわ」
マジパンは砂糖とアーモンドから作られる細工菓子で、サーターアンダギーとは砂糖つながりの命名である。
「よっしゃ、名前も決まった事だしファイアー号から改造していくか!」
「スーパーウルトラデラックスハイパーギガンティックファイアー号!」
騒がしく宇宙船の改造に着手する二人に、サーターアンダギーが更なる情報を伝える。
「一人が一隻の宇宙船を持っている事からも分かるように、このゲームでは数の利がとにかく大きいのですわ。偶然とはいえ三人のチームを組むことになりましたし、他のプレイヤーは基本的に二人一組なのでちんすこうさんの好きな対人戦でも圧倒的なアドバンテージが得られると思いますわよ」
その顔には、不敵な笑みが浮かんでいる。もう既に彼女も宇宙海賊として悪の道を進む気満々なのであった。