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榎本くもり
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#コメディ
サブくま@何気本垢1周年!
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「クソったれが!」
不興を露わにした童が、小さな拳を石段の縁に叩き込んだ。
姿形も相俟って、まるで子供の癇癪を見るような思いがした。
もっとも、実情はそれほど可愛げがあるものじゃない。
とばっちりを被った石段は、たちまち削岩機に撫でられたような惨状をさらし、その一部分をガラガラと崩落させた。
もちろん、人間の力で為せる所業じゃない。
奇怪な事柄を見聞きすることにかけては、それなりに免疫がついたつもりでいた。
そんな私をして、図らずも肝を冷やした理由は、やはり“ギャップ”によるところか。
見た目にも愛らしい童が、人畜無害とは真逆の行いを平然とやってのけた。
それだけなら、まだ持ち堪えることはできたのかも知れない。
ところが現状、彼の敵意は明らかにこちらを向いている。
そういった危機的なものが、拭っても拭っても容易には取り去れない冷や汗のように、首筋にじっとりと纏わりついているようだった。
「おぅ、そこ退けや。 お前さんと戯れるつもりは無えよ」
目元をかすに研いで、童がぴしゃりと言った。
しかし友人は応じず。
だらりと下げた剣線には、よほど深く食い込んだものか、緋々色の一刀が、バッテンを描く形で取り残されていた。
その模様に眉を顰めた童は、「さすがに番外は分が悪いな」と鼻を鳴らし、ゆっくりと腰を持ち上げた。
目線をじろりと構え、頭上に睨みを利かせる。
通せんぼをするように、賽銭箱の前に陣取る友人。
私たちには、その表情を知る術がない。
「これ……、人質になったりしませんか?」
矢庭に、彼女が囁くように発した。
小刀を持ち上げ、そこに居着いた一刀を示す。
「ならねぇな。 ガワが砕けようが拉げようが、霊が生きてる限り問題にもならねぇよ」
魂胆を見抜いた様子の童が、肩を竦めて応じた。
“命が惜しかったら退いてください”
恐らく友人の目論見は、そういった過激な内容のものだったのではなかろうか。
彼女らしくもなく、ちっとも手段を選ばないその姿勢に、事態の重大性をまざまざと痛感した。
史さんは無事なのか、真っ先に質そうにも、目の前の背中がそれを拒んでいるように見え、なにも言い出すことが出来なかった。
「いったい、何があったんです?」
「あ?」
「あなた、すっかりグレちゃって……。 やっぱり原因は」
「笑わせんな」
ぴしゃりと付した童は、唇を俄かに捲り、歯牙を剥き出しにした。
あどけない容貌には不釣り合いな、あまりにも凄惨な笑みだった。
「他人のこと言えた義理かよ?」
「え? はい………?」
「昔はそんなんじゃ無かったろ? 刃物みてぇに尖りまくってよ? あの頃のお前さんのがよっぽどシブかったぜ」
「それは……、いつの話をしてるんです?」
「八百万の先遣隊、ひとりで蹴散らした時よ。 内ぁ見てたぜ?」
かすか、友人の背筋に動揺が走ったように見えた。
コメント
3件
第119話、読み終えました。童のあの愛らしい見た目とのギャップ——石段を削岩機みたいに破壊するところ、すごいインパクトでした。そして「昔はそんなんじゃ無かった」の台詞、友人の過去を感じさせる何かがちらりと見えたようで、思わず背筋がぞくっとしました。史さんの安否も気になるし、続きが待ち遠しいです!