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夢主side





愛知県代表として来た全国の大会。


俺たちの学校はニ回競り上がったところで、優勝候補の井闥山高校と当たりボロ負けした。


悔しいな。

先輩達は泣いていたけど、俺はコートの中に入っていないせいか、入部して間もないからチームへの思い入れが薄いせいか、涙は流せなかった。



帰りのバスまで時間があったので、俺はそれまでの間もう一つの優勝候補の稲荷崎の試合でも見ようと会場に入り椅子に座った。


俺はそこでグロテスクなものを見てしまった。


「え、倫太郎じゃん」


稲荷崎のピンチサーバーとして出た倫太郎が得点を決め、チームメイトと楽しそうな笑顔でハイタッチを交わす光景。


締め付けられた心臓が喉から出そうな感覚になる。


倫太郎生きてた。よかった。また会えた。


あの頃を思い出して少しの愛おしさと同時に、卒業式の日を思い出して大きな嫌悪感を抱いた。



何も言わずに居なくなったのは、やっぱ俺のことが嫌になったんだ。

あんな笑顔、俺以外にも向けるんだ。


もうお前の隣は俺じゃ無いんだな。


そう思うと更に胸が強く締め付けられた気がして、倫太郎と目が合ったことも忘れてその場を飛び出した。



どこでも良いからと逃げた選手専用の廊下。


階段を降りた踊り場で、聞き慣れた懐かしい声が聞こえた。


「…(名前)!」

「…倫太郎」


倫太郎は俺の顔に手を近づけた。


きっと、中二の冬の時みたいに頬を撫でようとしてるのだろう。


また胸が苦しくなった。


あの頃、とても愛おしくて大好きだった倫太郎の手。

頬を撫でられた時、くすぐったいなんてツンケンした照れ隠しをしてしまったけど、もっと撫でていて欲しかった。


その手がまた、俺の頬を触れようとしてくれている。


嬉しかった。

数ヶ月で空っぽになった心が満たされる感覚。


でも、その倫太郎の手は稲荷崎のやつと触れ合った手だろ。

そんなもので満たされたって悲しくなるだけだ。


もし、また裏切られたら立ち直れる気がしない。

俺には倫太郎しか居ないから。


「やめろ」


また辛くなるなら、こんな手は要らない。

そう思って、倫太郎の手を弾いた。


「…な、んで」


倫太郎はひどく傷ついた様な表情をした。

こんなに歪んだ倫太郎の顔、初めて見た。


…何この状況。

なんか俺が倫太郎を泣かせてるみたいじゃん。


お前が俺を置いて行ったはずなのに。



「お前よく何も無かったかのように話しかけられるな。

俺の事、裏切ったくせに」


頭で思うより先に、俺は倫太郎に最低な言葉を投げつけていた。


あぁほら、更に倫太郎の顔が歪んでいく。



「え、裏切ったって…」

「自覚無ぇの?本当に最低だな」

「ちが、そう言うつもりじゃ…」

「じゃあ、どういうつもりだよ!

なんで連絡の一つもくれ無ぇの?俺の事、もうどうでもよくなったのか」


これは俺の本心だった。

一通だけでも連絡が欲しかった。どこかで繋がっていたかった。

ずっと倫太郎を求めてた。



だから倫太郎とまた話せるのなら、隣に居られるのならそれでよかったよ。


けどさ。


「違う!違うよ…」

「兵庫、楽しそうでよかったな。そっちでも頑張れよ、角名」


稲荷崎に居る倫太郎が、あまりに楽しそうだったから。


俺の事なんて考えずにこれからもバレーをして、プロになってほしいから。


俺は倫太郎の前から消えた方がいいと思ったんだ。



倫太郎に背を向けて、俺は一番下の階まで降りた。


倫太郎がこれ以上追ってこない様に。

もう探すことのない様に。



「クソ…泣いてんじゃねぇよ…俺の馬鹿」


誰も通らない廊下の隅で、壁に縋りながらしゃがみ込んだ。



自分自身の選択が、こんなにも自分自身を密封して苦しめるなんて。


倫太郎を知らない人生だったら良かった。



あぁ、もう前みたいには戻れないよな。




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