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「魚と豆ちょうだい!!あと、酒!!」
「アイよー!!」
「まーた、浅の旦那来てるよ……ここの煮売り酒屋がよっぽどスキなのかねぇ。」
「腰物下げた人が、ここに来るこたぁ滅多にねぇからなぁ。」
「ほら、帯刀。呑め」
「では……一献……」
グビグビ、ズズッ
「プァッッ!やっぱここの下り酒はうめぇなぁおい!!」
「確かに、上方の酒は呑み易く、旨う御座るな。」
――――
「へへ、浅の旦那ぁ!今日も贔屓にして頂き有難う御座います。」
「おう!こちとら今日もうめぇぜ!!」
「こちら、煮豆と煮魚で御座いやす。」
帯刀との意味も無い会話が続き、杯も進む。
二人とも妻も居らず、家庭を顧みる必要も無い。武士の妻など泣くだけ無駄だ、というのが、唯一共通する考え方だ。
亥の刻を過ぎるまで呑んだ二人は、其れ其れの家に向かう。まぁ、門所までは一緒なのだが。
ここを曲がって、更に曲がると門所。
そんな道すがらで……
――――
ザッ
「帯刀ー……誰が居んのかぁ……」
「ひぃ、ふぅ、みぃ……ダブって見えるで御座る……」
うげぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!
後ろで浅右衛門が吐く。
「浅右衛門殿……呑み過ぎで御座……」
ぼぉぉうぇぇぇぇぇぇぇっっ!!
帯刀も、つられて吐く。
「た、帯刀……どみすぎだーー」
「えぇ……」
――――
ザッ シャン
「あぁ……こで……(刀を)抜いた音だなぁ……」
「で、御座るか……」
「よし……帯刀……お前の背は任せろ」
浅右衛門は、帯刀の背に自分の背を合わせる。
実は酔った浅右衛門が背中ですがっているだけなのだが。
「あ、浅右衛門殿……抜いた相手の正面全てが、私で御座る」
「良いね、良い!!やっておしまいなさい!帯刀!」
――――
ビュッッ
その刹那、飛び込んで来る相手二人。
帯刀を狙う!!
「ちっ!!」
帯刀は抜く!!
よりも、早く浅右衛門は身体を反転させて帯刀の前に出る!!
抜いた名刀は、「長曽祢乕徹」。
新刀・東の横綱。「斬る者の最高峰」と謳われた銘刀!!
乕徹が肋骨下の銅を奔る!!浅は左足に急ブレーキを掛けて右足を踏ん張り伸ばし、返す刃で袈裟斬り一閃!!
切られた者達は、
静かに銅が滑り二つとなった。
「んな、感じかぁ……」
「相変わらずの腕前に御座るな、浅右衛門殿。」
――――
「帯刀。吐いて胃も楽になった。うちに来て呑み直すか。」
「では私は、一度戻ってアテを持参致しましょう。」
「うむ。明日は六のつく日。休みだから朝まで呑もう。」
「付き合いましょうぞ。」
幾何かの時を過ごして、二人の夜は始まる。
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