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ズバッッッ!!!
えも言われぬ爽快感が、浅を包む。
「…………」
「どうされました……? 浅右衛門殿」
ピタピタッ。
柄を何度も握り直す。
「むー……これ、馴染むわぁ」
刃先を見つめながら、浅は呟く。
「質屋・伊丹屋からの持ち込み刀ですな」
「こんなの、誰が持ってたんだろ」
ブンッッ!
空振りしながら、具合を見る浅右衛門。
「……やっぱこれ、良いね」
「伊丹屋、呼んで聞いてみますか?」
「是非、そうしてほしいなぁ」
「では、私が呼んで参りましょう」
――――
帯刀の呼びかけに応じて、伊丹屋の主人が登城してくる。
伊丹屋主人・宵野 喜兵衛。
伊丹屋は裏で「痛みや」と揶揄されるほどのえげつなさ。表裏が激しく、付き合って得をする者には金利安で貸し、そうでない者からは暴利を貪る。
「おぉ、その業物……お気に召しましたか、山田殿」
「こりゃ、ええわ……ちょうだい!!」
「あ、浅右衛門殿……」
「ほほ……贔屓にして頂いております故、お安く提供させて頂きますぞ」
帯刀が尋ねる。
「ちなみに、質入れの際には、いくら支払われたのじゃ?」
「十と、二両……」
「ほぅ。業物なら……妥当な値段か」
「十両に、まけて!!」
「いや、それでは私が損しますよ……そこはせめて、同額以上でお願い致しますよ、山田殿」
「かぁーーーーーー!!」
(……暫し、試し斬りを増やす必要があるなぁ)
「帯刀! 明日から斬って斬って斬りまくるぞ!!」
「では、お代金は後日……」
――――
「そりゃそうとさ、喜兵衛。これさ……誰の業物だぁ?」
喜兵衛は、口ごもる。
「ま、まぁ、あまり顧客のことは言えませんぜ、山田殿」
「ふむーーー……」
「では、また後日」
喜兵衛は、逃げ出すように城を後にする。
果たしてこの業物は、一体誰の物なのだろうか。