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おはよう世界。
ここ数日、春香との距離が
近づいてきている気がして、
何だか急に世界が明るく見えた。
宿題もギリギリで終わらせ、
(恭平にほとんど解答をみしてもらい)
最高の夏休みが終わった。
「久しぶりー!」
と長らく顔を合わさなかった面々が
言葉を交わしている。
夏休みが終わるとすぐ体育祭がやってくる。
亀山中学校での体育祭の主な見せ場は、
『ハリコ』と呼ばれる竹で枠組みを作り、
その枠組みに紙を貼り付け色を塗って
キャラクターなどの形に見せるものを
毎年各クラスごとに作り、
それに通じた劇をすることだ。
俺のクラスは、修学旅行で見た
劇団四季のライオンキングをモチーフに、
シンバ、ナラ、なぜかプライドロックを
作ることにした。
いつもなら1つのハリコしか作らないのに
3つ作るなんて手間も3倍だ。
でもみんな喜んで作ることにした。
放課後も時間を惜しまず
残って必死に作り上げていった。
そんな日のある夜。
俺は春香との事を考えていた。
タイミングというものがいかに大事かと、
中学生ながらになんとなく理解していた。
多分誘うなら今なのだろうと。
「今度2人でデートしませんか?」
ドキドキしながら打ったメールは
「いいよ!」
と、半ば拍子抜けであっさり返信が帰ってきた。
誘ったはいいものの、どどどどうしようと
あたふたしたが、考えに考え
シンプルに映画を見ることにした。
体育祭の前の週の休みに2人で
映画を見に行くことになったのだが、
駅前で待ち合わせ、合流した。
夏祭り以来の私服にドキッとし、
いつもロングヘアでツインテールにしているのに、
今日は結ばずにストレート、俺の心はストライク。
隣町にある映画館で『タッチ』の実写の映画を見た。
まぁ、恋愛っちゃ恋愛だけど青春ラブコメに
近いのかは分からない。
だけど内容なんて正直どうでもよかった。
2人で一緒の空間で一緒に同じものを目にする。
それだけでもう胸の高鳴りは最高潮だった。
特に印象的な会話があったわけではないが、
2人でデデデデート出来ただけで
もう満足だった。
「またね」
と言葉を交わし春香と地元の駅で別れたのだが、
しばらく駅から離れることが出来なかった。
それから3日後の夜。体育祭3日前のことだ。
春香と同じ吹奏楽部の
女子から一通のメールが届いた。
「健一!あんたの事春香ちゃん気になってるみたいだよ!!」
え?えええぇぇぇぇぇぇ!!
キタワァ━━━━━━(n’∀’)η━━━━━━ !!!!
となったが、改めて冷静に考える。
”告白しよう”
ちょっと展開早すぎるかなと思いながらも、
もうこの気持ちしか自分の中で答えがなかった。
体育祭前日に春香にメールを送った。
「体育祭で100m走かマイルリレーで
1位を取ったら伝えたいことがある。」
なんでこんな条件付きの、
しかも自分が伝える為の条件なのに
相手にそう伝えたかは自分でも分からない。
ある意味、宣戦布告みたいなものだろう。
だけど春香は何も聞かず
「わかった」
とだけ返信が来た。
さすがに察しただろうなとは思ったが、
俺の体育祭での目標が決まった。
一応、概要を説明しておく。
100m走…
体育祭1番最初にある競技で、
読んで字のごとく100mを全力で走る。
出席番号順で男女別6人ずつで出走。
ちなみに俺は毎年同じやつに負けて2番。
マイルリレー…
体育祭1番最後にある種目で、
言ってしまえば選抜リレー。
各クラス代表者4名選出し、
その4人がバトンを繋ぎ、グラウンド1周(400m)を
4回して計1マイルを走り1位を決める。
ちなみになんで俺が選ばれたか分からないし
バトン練習なんかしていない。そう、ぶっつけ本番。
更に俺はアンカー(最終走者)。
この2種目の内、どちらがで必ず1番を取り、
春香に告白する。
ひぐらしが鳴く頃、
俺はひっそりと目を燃やしていた。
どちらで1位になってもなにも景品も賞もない。
でもその1位は、でっかな手で俺の背中を
押してくれたらいいな。そう思った。