年が明けて節分も終わったというのに、俺は出演した映画のプロモーションで、毎日忙しい日々を送っていた。自分の誕生日も近づいているが、マネージャーに確認したら、案の定その日も仕事が入っている。
阿部ちゃんにごめんね、と言ったら、大変だねと逆に心配されてしまった。
二人きりで会いたいなあと思うけど、しばらくそれは叶わなそうだ。
映画のプロモーションの中で、昔からお世話になっているテレビ局に一日中詰めていなきゃいけない日があって、朝から夕方まで、俺は同じ楽屋に待機していた。
いわゆる電波ジャックだ。
局のご厚意で、楽屋は広く、居心地が良い場所を確保してもらった。
俺はふかふかのソファに横になり、用がない時には目を閉じて眠っていた。
コンコン。
ドアがノックされる。
時計を見ると予定の取材時間や出演時間とずれていたから、誰か挨拶に来たのかなと思って、俺は髪を整え、ドアを開けた。
🖤阿部ちゃん
💚めめ、来ちゃった
空き時間に近くを通ったので、遊びに来てくれたらしい。
俺は意外な恋人の登場に喜び、そのまま楽屋の中に招き入れた。
🖤嬉しいな
💚俺も
手には栄養ドリンク。
疲れた時にはこれが効くんだよと教えてくれた。
ひとまずドリンクは鏡の前に置いて、俺は性急に阿部ちゃんとキスをした。
身体が離れた時、顔を上げた阿部ちゃんの上目遣いが可愛くて、もう一度しようとしたら優しく拒否された。
💚人が来ちゃうから
🖤栄養ドリンクより効くのに
💚もう
俺は仕方なく阿部ちゃんを抱きしめる。
阿部ちゃんもハグは許してくれるらしい。
💚早く観たいな、めめの映画
🖤俺も観たいな、阿部ちゃんと一緒に
阿部ちゃんは甘えるように聞いた。
💚一緒に観られるの?
🖤ごめん、しばらくは無理そう
💚だよね
肩を落とす阿部ちゃんのために、この忙しい毎日が終わって、映画館が静かになった頃にこっそり二人で行こうと心に決める。
少し都心から離れた方がいいかな。
それならついでに温泉にでも行けたらいいな。
💚めめ、寝てたよね。俺、もう帰るから
🖤えっ、もう?
💚だってめめ、寝不足の顔してる
🖤寂しい。帰らないで
指を絡ませて、手を繋ぐ。
帰るなら、俺も一緒に帰りたい。
そんな許されないことすら考えてしまう。
💚じゃあ、横になって?マッサージしてあげる
言われた通りにソファに横になって、腰や背中をほぐしてくれる阿部ちゃん。
正直全然へたくそだけど、一生懸命で愛おしい。幸せな気持ちで目を閉じたら、いつのまにか眠ってしまったようだ。
コンコン。
またノックで目を覚ますと、今度はマネージャーだった。
「目黒さん、そろそろ時間ですよ」
起きたらもう阿部ちゃんはいなくなっていて、テーブルの上にメモ書きが一枚。
💚『時間ができたら、温泉でも行こうね』
俺と同じことを考えていたのかと、心が温まった。
俺はポケットにメモをしまい、身なりを整えて、スタジオへと向かった。
つづく。
コメント
14件
ギャー!!! 温泉行って!どうぞ行って!!早く行って!!! マッサージ申し出るけど下手くそなのわかりすぎてスーパーで頷くとこでした危なかった!笑 平和で穏やかなめめあべをありがとうございます😊
敬愛するみちるさんのために書きました🖤💚次にめめあべ書くのは、次回作のいわなべ💛💙くらいですかね。このコンビ、人気あるよねー😌