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「じゃあ……オムライスも冷めないうちに食べよっか」
「うん! あっそうだ、まだ盛り付けてなかった…! 今盛り付けるから手洗って着替えて待ってて!」
「りょーかい。あっ……そうそう、ゆず、今日はデザートもあるよ」
「デザート?」
卿は悪戯っぽくニヤリと笑い、持っていた紙袋から小さなケーキボックスを取り出した。
「近所の店で、この前食べたいって言ってた期間限定のタルトがあってさ。ゆずに買ってきてあげようと思って」
「え! わざわざ買ってきてくれたの…!!」
「そうそう。ゆずのこと考えてたら、つい買っちゃった」
「嬉しい……! ありがとう!! あとで一緒に食べよ!」
僕は宝物を受け取るように箱を持ち、それを冷蔵庫にしまった。
彼が仕事の間も僕のことを考えてくれている。
その事実だけで胸がいっぱいになった。
二人でダイニングテーブルに揃い、手を合わせる。
「「いただきます」」
スプーンを入れると、とろりと半熟卵が溶け出し、濃厚なバターとケチャップの香りが鼻をくすぐる。
「……めっちゃ美味い。本当、ゆずのオムライス最高だね、毎日でも食べたいくらい」
美味しそうに頬張る卿を見て、僕は照れくささに顔を熱くした。
「ほんと? 喜んでくれて良かった…!」
「すごいよゆず。また腕上げたんじゃない?」
「そっそんなことないよ!」
そんな穏やかな会話を楽しみながら、完食する卿の姿に幸福を噛みしめる。
疲れているはずの彼が、僕の料理で笑顔になってくれる。
それこそが僕の存在意義のように思えた。
◆◇◆◇
食後の片付けを済ませ、楽しみにしていたタルトをテーブルに並べる。
フルーツたっぷりの色鮮やかなタルトは、宝石のように輝いていた。
「んんっ! 甘くておいひい~!」
「ふふっ、ゆずが喜んでくれてよかった」
「……卿って、本当に僕のこと理解してるって言うか、嬉しいことばっかしてくれるよね」
「そりゃあね、ゆずのこと、誰よりも好きなんだから」
そう言って微笑む卿の瞳は、底なしの沼のように深くて優しい。
どうしてこんなに愛してくれるのか不思議に思うこともあるけれど
彼が当たり前のようにくれる愛情が、かつて孤独に凍えていた僕の心を溶かしていく。
◆◇◆◇
ソファで肩を並べ、テレビを眺めるゆったりとした時間。
他愛のない会話が続く中で、不意に卿が僕の肩を抱き寄せ、その体温を押し付けてきた。
「ねぇゆず」
「ん?」
「俺ね、ゆずと一緒に暮らせるなんて夢みたいだって思うんだ」
「えっ……それは、こっちのセリフだよ」