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#僕のヒーローアカデミア夢小説
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翌朝、ガルドがフィオナの部屋を訪ねると――そこには誰も、いなかった。
突然の光景に、ガルドの鼓動が速くなる。穏やかな日が、それだけで壊れていった。
「アリアさん! フィオナ様を見なかったか!?」
「え? あたしも起きたばかりで――」
しかしアリアは何かを察し、1階の全ての部屋を見てから、2階に向かう。
当然のように、どこにもフィオナは見えない。
「もしかして……攫われた?」
ガルドは先に起きており、アリアと同様、全ての部屋の状況を把握していた。
……ただ、フィオナの部屋を除いて。
そんな折、ザインとメルヴィナが外から戻ってきた。
「ただいま戻りました。今日も天気が良くて、散歩日和ですよ。
……あれ? どうかしました?」
「フィオナさんがいなくなったみたいなんだけど……外で見なかった?」
「うん? 裏の倉庫に向かったのは、早朝に見たぞ?」
「お前は何で、そんな時間に外にいたんだ?」
「いや……昨日の無理が祟ってな。
凄い筋肉痛だったから、軽く運動をしてたんだよ」
確かに重い塩を全力で運んだり、懸命にヌシのヌメヌメを取っていたからな……と、全員が納得する。
ガルドは急いで、裏の倉庫に向かった。
――そこには誰もいなかった。
ただ、倉庫の扉だけは開いたままになっていた。
「フィオナ様は、几帳面な方なんだ。
扉の締め忘れなど、今までにしたことは無い……」
「情報屋は昨日、塩を取りにきたよね? そのときは、ちゃんと閉めた?」
「もちろんだ。指差し確認を3回もやったから、確実だぞ!」
……とすると、フィオナはこの場所で攫われたことになるのか。
「ガルドさん、何か心当たりはありますか?」
「ぬぅ……。大聖堂では、主教と大司教が失脚したと聞く。
もしかしたら何か関係が……?」
「確かに主教殿は、フィオナさんの情報を持っていましたけど――
それは異端諮問局が入手しましたからね。オリバー様なら、その辺りは問題ないはず……」
「それなら、この前潰したヴェルガ教とかは?
司祭長はアリアが倒したけど、あそこも聖女を探してただろ」
「ふむ……。ヴェルガ教か……」
ザインの言葉に、ガルドは考え始めた。
しかし明らかに動揺しており、集中することができていない。
「ガルドさん、落ち着いて。飴玉あげますんで」
「お、おう? ……実際、今にも走り出したいくらいなんだが――
ヴェルガ教なら、オレも以前に調べたことがある。
……アリアさんたちが倒したのは、司祭長……レナルドの方か?」
「はい。本人は倒しちゃいましたけど、信者の生き残りなら、街に連行してもらいましたよ」
「……というと、今回の件はその残党か……?」
ガルドは宙を仰ぎ、考えを整理する。
アリアにもらった飴玉が、何となく助けてくれているような気がした。
「――もしかして、ヴェルガ教の……多元主義派か?」
初めて聞く名前に、全員の視線がガルドに集中する。
「それって、何ですか?」
「ああ。ヴェルガ教の主流派……原理主義派と意見が合わなかった奴らだ。
教理に対して、違う解釈をしてドロップアウトした……という連中だな」
「オルビス教でいう、異端……みたいな感じか?」
「んー、ちょっと違うかな。
ヴェルガ教の場合は、『ぼくのかんがえた最強の信仰』みたいな違いがある感じ?」
「……分かりやすいような、分かりにくいような」
「でも、急いでお助けしないと! ガルド、どこに行けば良いか、心当たりはある?」
メルヴィナも慌てている。
フィオナが聖女だということもあるが、既にひとりの人間として、好きになっていたのだろう。
「実際、今までは無視していい存在だったからな……。
……慌てても仕方が無い。ご無事を祈りながら、ひとつひとつ進めていこう……」
ガルドは拳に力を入れながら、そんな言葉を振り絞った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
時間に余裕は無い。
……そんな確認はするまでもなく、それぞれ全員に役割が与えられた。
ガルドは顔なじみの情報屋を訪れ、ヴェルガ教についての情報を探し始めた。
ザインは情報屋として近隣の街を訪ね、独自に情報を集め始めた。
アリアは持ち前の話術で、様々なところで聞き込みを始めた。
そしてメルヴィナは――
……ひとりで出来ることもなく、危ないながらも、丸太小屋で留守番をすることになった。
「……本当。私って役立たず……」
辺りの様子を探りながら、怪しい人がいないか、怪しいものがないか……念のため、確認していく。
既に何度も確認は終わっているが、それでも何かを……と、常に動きまわる。
そんな折、見知らぬ婦人が森の中をやってきた。
「こんにちは。フィオナさんかガルドさんは、いらっしゃる?」
「あ、こんにちは。
えっと……今はどちらも不在です。私は留守番を頼まれていて」
「あら、そうなの。川の水のことで、相談に来たんだけど」
「川の……? よろしければ、私が伺います」
メルヴィナは庭のテーブルに案内して、お茶を淹れて話をすることにした。
「この森から流れる川があるでしょう?
たまに、水が濁ってくるのよ。特に昨晩は、それが酷くて」
「滝つぼのヌシが、悪さをするんでしたよね。
昨晩というと――……ああ、昨日の夕方くらいに、ガルドさんがヌシを討伐したんです。
そのあと、濁ってしまったのでしょうか」
「あら! あらあら! それって本当?
それじゃ、これからは綺麗な水を安心して使えるのね!」
婦人は嬉しそうにはしゃいだ。
そもそも水が濁っていなくても、自分が使う水源に魔物がいる……というのは気持ちの良いものではない。
しばらく喜びの声を聞いていると、婦人はハッとした顔で言った。
「実はね、また問題が起きたんじゃないかって……冒険者ギルドで、討伐隊を派遣するって話になったの。
私の息子から聞いてねぇ。それで、ガルドさんにも一声掛けておかなきゃ、って。
ほら、ガルドさんって、森に人が入るのを嫌がるでしょ?」
ガルドのことは初耳だったが、メルヴィナはとりあえず頷いておいた。
それにしてもヌシを討伐した結果が、まさかこんな動きをもたらしていたとは……。
「その辺り、私は詳しくないので……。ガルドさんが戻ってきたら、お伝えしておきますね」
「お願いできる? それじゃ、私はこの辺で失礼するわね。美味しいお茶を、ありがとう」
「いえ。気を付けてお帰りください」
メルヴィナは婦人の姿が完全に消えるまで、静かに見送った。
そしてその姿が見えなくなると……力無く、椅子に身体を預けた。
……自分ももっと、動きたい。もっと、誰かの役に立ちたい。
ガルドが2つ目の異能を得たように、自分も新しい祝福を――
「……ううん。アリアさんは、そんなことはしない」
あの人は……自分の役に立つからと、仲間に異能を与えることは、きっとしない。
ガルドに2つ目の異能を与えたのは、1つ目の異能が使い物にならなかったから。身を滅ぼす異能だったから。
……メルヴィナはそう思った。
短い間に、アリアの性格のことだけは……分かったつもりだった。
「――はぁ。私、もっとがんばらないと」
腐っている暇はない。
いろいろなものを捨ててきた自分は、他のものをたくさん拾っていかなければいけない。
とりあえず、メルヴィナは自分にできそうなことから、始めることにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――夜。
丸太小屋の食卓で、ザインとガルドがスープを飲んでいる。
……それはメルヴィナが作ったものだった。
「……うん。これは……うん」
「お嬢さん。なかなか……個性的な味ですね」
「不味いなら不味いって、言ってください!!」
メルヴィナの言葉のあと、しばしの沈黙が流れる。
いつもであれば、この辺りでアリアの軽口が入ってくるのだが……彼女はまだ、戻っていなかった。
「それにしても、アリアは遅いなぁ……」
「もしかして、街で何かあったのか? 暴漢に襲われたり……」
「旦那を負かすくらいには、強いヤツなんだけどなぁ?」
確かに戦闘においては、アリアが一番強い。
とはいえ、見た目は華奢な少女なのだ。心配しない方がおかしい……というのは、全員が一応分かっていた。
「老婆心ながら、もう少し……気を遣った方が良いぞ?」
「……ああ。……参考にするわ」
再び沈黙が流れる。
フィオナがいなくなり、そもそもが暗い雰囲気……というのもあるが、やはり何かが足りない。
メルヴィナは、アリアがいつも座っていた椅子を眺めながら――それが心の拠り所なんだな、と思った。
戦闘の強さとは別に、みんなを支えるという強さがある。
自分はきっと、そういうものに憧れているのかもしれない……。
――ガタンっ
不意に、玄関から物音が聞こえた。
全員が走って玄関に向かうと、そこにいたのは――
……アリアと、レイラだった。
「ただいまぁ……。あーもう、疲れたぁ~」
「ここはどこですかぁ~?」
アリアはレイラを背負っており、レイラはぐったりと、溶けるように背負われている。
一同が呆然としている中、アリアはレイラを応接室のソファに寝かしつけてから、食卓にやって来た。
「おう、お帰り……」
「んあ~。冒険者ギルドで、レイラに出くわしてさぁ……」
「レイラ、というのは?」
「あはは……。アリアさんを、唯一振り回せる人ですよ……」
ザインとメルヴィナは、ガルドにレイラのことを教えていった。
監獄のある街で出会ったこと、大聖堂にまで押しかけてきたこと――
また、『直感の才能』というものを持っており、その名の通り、直感力が凄まじいこと。
「レイラは今、あちこちの冒険者ギルドで活動しているんだって。
それで、今一番行くべきところ~……って選んだのが、この街みたいで」
「ほう?」
「それで、何かトラブルに巻き込まれていたんだけど――
何故かあたしが助ける流れになって、そのまま連れてきた……ってわけ」
「はぁ……。相変わらず、お前と縁があるなぁ」
「レイラさんは、アレですよね。
アリアさんを求めて、あちこち行っているというか……」
「――そう、それ!」
アリアは突然しゃっきりとして、全員に言い放った。
「つまり、フィオナさんの行き先がある程度でも絞れれば……。
あとはレイラの力で、何とかならないかな?」
「おお、それは……いけるのか? どうだ?」
「いや……。そうは言っても、ただの勘……ということだろう?」
アリアとザインの言葉に、ガルドは疑いを向ける。
そんなガルドを見て、メルヴィナは軽く迫る。
「でも、完全に適当よりは良いでしょう?
レイラさんの才能は、アリアさんの祝福で得たものだし」
「あはは……。その才能のおかげで、あたしは追い掛けられてるんだけどねぇ……。
さて、それじゃ情報屋とガルドさんの結果を聞きましょうか。
――の前に、メルちゃんはどうだった?」
「はい。留守番中に、近くに住むご婦人が訪ねていらっしゃいまして。
……その話は、あとでガルドに伝えるね」
「分かりました、お嬢さん」
「あ、そうだ。あとは時間を見つけて、スープを作ってみたんです。
アリアさんも、ぜひ飲んでください」
メルヴィナがスープを温めて戻ってくると、3人は入手した情報の話をしていた。
いつか自分も、あの輪に入ることができれば……そう思いながら、話の邪魔にならないようにカップを置く。
「あ、メルちゃん。ありがと~♪」
話をしている最中にも、自分を労ってくれる優しい笑顔。
ああ。やっぱり私には、こういう人が――
「――まっず!!」
その後、アリアはザインとガルドに絞られた。
メルヴィナは涙目になっていたが、アリアが料理を教える……という条件で和解した。
ただ、内心……メルヴィナは、こういうのも悪くない――とも、思ってしまうのだった。