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「……祥子……祥子……」
さっきまで彼女を冷ややかに見ていた女子たちも、倒れた祥子の姿を前にして、次第にその死を受け入れざるを得なくなっていた。
馬場芽美《ばばめみ》は、その中でも祥子と一番の仲良しだった。
震える手で黒い布の上から祥子の体を揺さぶり、必死に呼びかける。
「祥子……ねぇ、嘘でしょ……? 起きてよ……っ!」
その声はかすれ、涙が頬を伝っていた。
「芽美、もう無駄よ……」
サークル長の原沢雫《はらさわしずく》が、そっと肩に手を置く。
彼女自身も動揺しているはずなのに、部員たちを落ち着かせようと努めていた。
しかし、芽美は祥子の遺体を前にして、ただ唖然とすることしかできなかった。
「……オーストラリアなんて聞いてないし……」
小さく呟いたその言葉は、彼女自身が知らなかった事実への驚きと裏切りの感情を含んでいた。
そう……芽美は、祥子のオーストラリア旅行の計画を聞かされていなかったのだ。
彼女は岐阜の山間部で生まれ育ち、裕福とは言えない一般家庭の出身。
当然、オーストラリアなんて高額な卒業旅行に参加できるはずもなかった。
むしろ、今回の山梨の格安旅行には、誰よりも喜んでいた一人だった。
「みんなで最後に楽しい思い出を作れる」と、心から思っていたのに――。
「……楽しみだねって……いい思い出ってさ……言ってたのよ……」
芽美の声が震える。
「それに、私も本当は……サークルじゃなくて……祥子と二人で行きたかったの……」
その言葉に、教室内の空気がかすかに変わる。
彼女の悲しみに同情する者もいれば、呆れたようにため息をつく者もいた。
そして……。
「バカじゃないの」
冷たい声が響いた。
谷津レナミ《やつれなみ》が鼻で笑い、鋭く言い放つ。
「祥子って、ほーんとに見栄っ張り女。今さら同情しても仕方ないでしょ?」
その口調には、一切の哀れみがなかった。
「てかさ、芽美も結局、祥子といたのは、お金持ちのおこぼれが欲しかっただけじゃないの?」
「……っ!」
図星だった。
芽美は何も言い返せず、唇を噛みしめる。
教室内の空気はますます不穏なものへと変わっていく。
パンッ!
突然、スダが軽く手を叩いた。
「さてさて、次に進みましょうか」
黒板の前へと戻るスダ。
まるで、たった今人を殺したことなど何でもないかのように。
#ミステリー
鬼霧宗作
202
さなめ
538
江藤ルミエール
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コメント
1件
いやあ、この話、めちゃくちゃ重いですね……。祥子さんの死を受け入れられない芽美と、平然と切り替えるスダの温度差が怖すぎる。特に「オーストラリアなんて聞いてないし」って呟きに、友達の本当の姿を知らされていた悲しさと悔しさが込められていて胸が痛みました。レナミの「おこぼれが欲しかっただけ」という言葉も、芽美の図星を突いていて、人間関係の醜い部分をリアルに描いてますね。タイトルの「武器支給」がどう回収されるのか、続きが気になります。