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人間は何を知っているかではなく、何をしようと思っているかによって、価値・無価値、有能・不能、幸福・不幸であるが決まる。リントネル
アスランは金星に建設された都市で、 オレが育った都市でもある。金星全域を統治する国家、オアシスの首都だ。オレはそんなオアシスの防衛軍に所属するアルフレッド・クルーズ。アカデミ一を首席で卒業して防衛軍に派遣されてからもうすぐ1年。
「クルーズ士官、アスランとの接続が完了しました。」下位の役職の軍人がアスランの政府機関との回線を繋いでいたが、それが無事終わったようだ。
「ありがとう。席を外してくれるか?」俺はそう言って、彼に席を外してもらう。目の前のモニターに閣僚たちの顔が写っていることを確認し、俺は口を開く。堂々と、かつ真剣に俺は語る。
「パルパティが秘密裏に武器の開発を進めている件ですが、かなり深刻な問題を誘発するかもしれません。パルパティの武器開発はヨーロッパ共和国から支援を受けていることが判明しました。」
各省庁の責任者や大統領、議会の代表は慌てたような表情をする。そんな中、ヤナカ国務長官が口を開く。
「クルーズ士官、ヘルモスを急襲すれば25年ぶりに戦争な勃発がするということ?」国務長官としては当然気になることだろう。
「ヤナカ国務長官、その通りです。ただ現在われわれは詳しい情報を持っていません。今急いで何か行動を起こすことは成功する確率を大きく下げることになります。一方で、偵察や分析により多くの時間をかければ武器の開発フェーズの進展を招く可能性は高まります。」
「クルーズ士官、あなたの意見は?」
今度はウェズリー首席補佐官が口を開く。
「ウェズリー首席補佐官、俺は現時点で軍事行動を急ぐべき理由はないと考えます。現在は彼らが国際的取り決めに対して違反しているという疑惑の段階であり、状況証拠はそれを示しているかもしれませんが、冷静に彼らについて判断するための材料を集めるべきです。現在われわれがすべきことは直接的な軍事行動ではなく、より多面的で穏健なアプローチだと考えます。」
俺はそう答える。新兵器の開発状況が分からない以上、軍事作戦はある程度延期されるべきだ。憶測や政治的イデオロギーで軍事作戦を強硬すればひどい目に遭う。イスラエルとサウジアラビアがイランを核攻撃した紛争が100年近く前にあったが、それがどのような悲惨な結果を招いたかを考えれば、結論は1つに決まっている。状況を冷戦に判断するための慎重さは美徳だ。多くの人間はそれを過小評価しているが。