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第十一章 白狐の導き
白狐は木々の間を軽やかに駆けていく。
「待って……!」
ツララたちは、その後を追って森の奥へ進んでいった。
やがて木々が開け、小さな広場へたどり着く。
そこには、長い年月を経て崩れかけた石造りの神殿が静かに佇んでいた。
「これは……。」
ノアが周囲を見回す。
「地図には載っていません。」
レオンハルトは剣に手を添えた。
「遺跡か。」
「ずいぶん古そうだな。」
ルークは神殿を見上げ、静かに頷く。
「警戒しながら中を調べようか。」
「はい。」
神殿の中は薄暗く、ひんやりとした空気が流れていた。
天井から差し込む光が、床に淡く広がっている。
ツララはゆっくりと歩きながら壁へ目を向けた。
「……あ。」
そこには、大きな紋章が刻まれていた。
花びらが幾重にも重なり、その周りを雪の結晶が囲む、美しい紋様。
ツララは無意識に手を伸ばす。
「ルミアーナ嬢?」
ルークが優しく声をかける。
「どうかしたかい?」
「……分かりません。」
ツララは紋章を見つめたまま、小さく首を振る。
「初めて見るはずなのに……。」
「どこか懐かしい気がして……。」
その言葉に、ねねだけが静かに目を細めた。
(お嬢様……。)
しかし、その理由は誰にも分からない。
「会長。」
ノアが一冊の古びた本を見つけた。
「こちらに文献があります。」
ルークは本を受け取り、丁寧に埃を払う。
だが、ページのほとんどは風化して読めなくなっていた。
唯一、残っていた一文だけが目に入る。
『氷の花は、世界が終焉へ向かう時、再び咲く。』
「氷の花……?」
レオンハルトが眉をひそめる。
「何のことだ?」
ルークは本を閉じた。
「今は分からないね。」
「学院へ持ち帰って調べよう。」
もちろん、この”氷の花”こそが、ツララの運命へつながる言葉だとは、まだ誰も知らない。
その時だった。
カチッ。
「……!」
ねねの表情が変わる。
「皆様、下がってください。」
次の瞬間、床の魔法陣が赤く光った。
ゴゴゴゴ……
神殿全体が揺れ始める。
「罠だ!」
レオンハルトが叫ぶ。
天井から石柱が次々と落ちてくる。
「ルミアーナ嬢!」
ルークは咄嗟にツララの手を取り、自分の方へ引き寄せた。
ドォン!!
巨大な石柱が、ほんの数秒前までツララが立っていた場所へ落ちる。
「危なかったね。」
ルークは優しく微笑む。
ツララは突然手を握られたことに気付き、顔を真っ赤にした。
「あ……ありがとうございます……。」
「気にしなくていいよ。」
ルークは自然に手を離す。
その何気ない仕草に、ツララの胸は少しだけ高鳴っていた。
「出口はこちらです!」
ノアが叫ぶ。
全員が神殿の外へ駆け出す。
その直後――
轟音とともに神殿は崩れ落ちた。
舞い上がる土煙。
静寂。
ルークは全員を見回す。
「怪我人は?」
「ありません。」
「僕も大丈夫です。」
「問題ない。」
全員無事だった。
「よかった……。」
ツララは胸をなで下ろす。
すると、先ほどまで先導していた白狐は、いつの間にか姿を消していた。
「どこへ行ったんだろう……。」
ツララが呟く。
ねねは遠くの森へ視線を向け、小さく微笑んだ。
「あの狐は……きっと、お嬢様をここへ導くために現れたのでしょう。」
「導く……?」
「はい。」
「そんな気がいたします。」
彼らが去ったあと。
崩れた神殿の地下深く。
誰にも見えない場所で、淡い青い光が一瞬だけ輝いた。
まるで誰かが、
「ようやく来てくれた」
と微笑んだかのように――。
その光は、静かに闇へ溶けていった。
第一巻 第十一章 完
✨次はいよいよ第十二章(1巻最終章)!
校外実習の帰り道で、魔族十二将の一人が初めて姿を現し、ルーク・ねね・ツララたちと短く対峙!?
コメント
1件
ゆねちゃん、第十一章読了したよ〜🌸 白狐に導かれて辿り着いた神殿、古の紋章に「氷の花」の予言…めっちゃ気になる伏線じゃん!!特にルークが咄嗟にツララの手を引いて守るシーン、胸きゅん不可避すぎた😭💕 何気なく手を離すとこも含めて尊い…。 ねねの意味深な微笑みと、閉じた地下で光る青い光も不気味でエモい。 次章で魔族十二将登場!?もう待ちきれないよ〜✨