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■呪画怪談:『花骸(はながら)』
■追記資料
民俗文化研究者より届いた掲載差し止め依頼メール(原文)
※取材から8日後 23:48 受信
※件名:【至急】掲載差し止めのお願い
○○様
本日ご送付いただいた校正原稿を確認しました。
重大な誤りがあります。
私は先のインタビューで
「あの絵には文脈がない」と述べました。
しかし、これは解釈違いでした。
文脈が“ない”のではありません。
文脈が“読めていなかった”のです。
あの図像は孤立していません。
これは単体の絵画ではなく、
「人数を前提とする構造物」です。
私は、観測者を含めていなかった。
そこが誤りです。
先ほど気付きました。
あの絵の中の配置は、
視線の位置を含めて完成します。
私はすでに
構成要素の一部になっています。
記事は掲載しないでください。
公開されれば、
読者も「数」に入ります。
これは比喩ではありません。
私はあなたに警告しました。
それでも記事化を進めた。
あなたの責任は重大です。
謝罪を要求します。
最後。
もう遅いかもしれませんが
私は今、 人数を確認できません。
背後の壁に、
余白がなくなりました。
池畑隆太(仮名)
──
■その後の記録(記者メモ)
・メール受信後、返信するも未達
・電話は呼び出し音のみ
・研究室を訪問 → 無人
・大学事務「数日前から出勤していない」
研究室の壁には
画鋲の跡だけが複数残っていた。
絵はなかった。