家に帰ってからも、西陽が射すレッスン室で見たあの光景が俺の網膜に焼き付いていた。
💜敵わねえよ、あんなの…
目黒もなべも、本当に美しかった。
お似合いというのは、ああいうカップルをいうのだと思った。
俺じゃ、分不相応だと思った。
俺は、なべを好きでいることを諦めた。
💙ふっかー、おはよ…
💜照、おはよー!
💙ふっか、この間の話なんだけど、
💜佐久間、ちょっといいか?
💙………
我ながら子供っぽいと思ってる。
でも、意識的に避けることしか、その時の俺にはできなかったんだ。
何度もこういうことが続くうちに、なべももう無理に俺に関わらなくなった。
俺らはカメラの前では話す程度の関係になった。
それとともに俺の日常は、退屈なモノトーンに変わっていった。
🩷ちょっといいか?
💜おぅ、佐久間どうかしたか?
休憩中、周りの空気を遮断するためにずっと音楽を聴いていた俺に、佐久間が話しかけて来た。少し顔が怒っている。
隣りに阿部ちゃんもいた。
三人だけでいっぱいになるような狭い会議室に呼ばれる。
佐久間は言った。
🩷お前たち、どうなってんの?
💜お前たちって誰のこと?
💚とぼけないでちゃんと話して。翔太と何かあった?
💜……ないけど?
🩷んなわねぇだろ、ふざけんな!
💚佐久間、落ち着いて
俺は佐久間に胸ぐらを掴まれ、危うく殴られかけた。
🩷翔太のこと、嫌いになったのか?
は?
んなわけねぇだろ。
好きだよ、大好きだから見てるのがつれぇんだよ。
俺は絶対に言えない想いを心の中で叫んだ。
💚みんな気にしてる。ちゃんと話してほしいんだ
💜いや、何もないけど
🩷そんなわけねぇだろ
ドアが開き、今度はなべが入って来た。
俺たち三人が連れ立ってここへ来るのを見ていたようだった。
💙ふっか。俺、なんかした?
俺は腹の底から憎悪が込み上げて来るのを感じていた。
生まれて初めての衝動だった。
💜……気に入らねえんだよ
💙え?
💜佐久間と阿部もそうだ。何なんだよお前ら、ここは学校じゃねぇっての!
俺の声は震えていた。
三人が息を呑んで俺を見ている。
俺はもうわけがわかんなくなって、でも止まらなくて、思ってもないことを口走っていた。
💜なべ、この間、目黒といちゃついてただろ?俺、実は見てたんだよね。あっちでもこっちでも好きだだの、恋人同士だのってやられたら、こっちは気が散って仕事になんねぇよ!
💙あれはそんなんじゃ……
なべの顔色が変わったのを見て、俺はますますなべを痛めつけてやりたくなった。
💜プライベートと仕事はきちんと分けてやってくれよ!俺が言いたいのはそれだけだ!お前らどけよっっ!!!!
………最低だ、俺。
一番公私混同してるやつが何言ってんだか。
俺は勢いのままに、なべを突き飛ばして会議室を出た。
その日からは針のむしろにいるみたいに、俺は最低最悪の孤独なぼっちになった。