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「例えどんな死でも、黙って耳を塞いでいるような愚劣はしません。」
2号のその言葉で3号は瞳を見開いた。2号の顔は、さっきまでの弱気の顔とは違って見えただろう。
部屋に残っていたのは血生臭さが残っている。この人は、誰かを弔うことができるだろう。けど、そんなこと自分にはできない。
「…心身に異常きたす可能性がある。そうなれば任務の進行に支障が出て迷惑。そんなに無理しなくていいから。」
やはり2号は平気そうな顔をしているが、瞳の奥はどす黒い。さっさと任務を終わらせないとだ。
3号は制御室へと行くが、その間に2号は脱出路を探すといい別の通路を探索してるだろう。
制御室は複雑な機械や電子回路やらが多数あるせいでUSBメモリなどが見つからなかった。
[通信電波受信]
[承認]
『こちら通信士92号。…3号さんひどいじゃないですか!!なんで急にブチ切りするんですか?!帰ったら説教です!』
「あーごめんごめん。わかったからいちいちやかましい。」
『ひどい!!!そんな仕打ちひどすぎます!!それと!46分34秒後にヘリがそちらに来るそうです。』
「はいはーい、そのうちに情報集めときますよー。」
もうこの人との会話だるい。女の子ってまじで何考えてるかわからないなとしか言えねぇ。
この間なんて1号さんと喧嘩したとか言って、仲裁任せられたし。
『今日私、1号さんとまた喧嘩し───』
[通信終了]
またあの人喧嘩したんかよ。もう仲裁するのだけはごめんだよ。あー、また通信電波来たんだけどもう無理無理、拒否拒否っと。
ため息をつき、3号は操作盤の目の前に立つと操作盤を操作しだした。過去のスフェルナの記録や兵器製造工場の記録などの情報があった。
けど、過去のスフェルナの話だけは見てはいけないんだっけか。とりあえずここにトラップは仕掛けられてないことは確認できてるし、こののデータをこのUSBに送り込む。
USBのデータ送信中に2号が部屋に入ってきた。不意に入ってきたせいで思わず剣を向けかけた。
「あ、ごめん。急に入ってびっくりしたよね。」
2号は何やら少し挙動がおかしかった。両手を後ろに隠しているし、絶対なんか持ってるだろ。
3号は2号に近づき二の腕を掴むが2号が意地でも隠したいのか背を塞ぐように壁に持たれる。
「なんか隠してるだろ…。」
「しッらないよっ。」
「怒らないから言ってみなさい。」
怒るやつじゃんと呟きながら背中に隠していた物をそっと差し出す。3号がその本を見て少し驚いたような顔をした。
「これって、異星人が持ってた本…か?」
うんと頷いて2号は曇った表情を見せた。この本の内容をチラりと見たところこんなことが書かれていた。
『ある日、侵略者が来る時、6人の救世主様が地上に降り、我らのお助けをすることでしょう。』
そんなふざけた内容が書いてあった。そもそも、救世主様もなにも、侵略しているのは奴らなのに。おそらく、それも異星人の施しだろう。
侵略者から同族を守ろう!みたいな風潮にさせるために工作した情報を流出させたんだろう。それを、鵜呑にした異星人が増えているのだとか。
「2号、この本は教育上良くないからやめておけ。普通にこれもってったら怒られるだろうが。」
これは2号に、いや、全体に害を及ぼしかねない。
3号はほっぽり出すように本を投げる。2号はけちと呟いて拗ねている様子だった。
USBを抜き取ると3号は操作盤にあったデータ全ての削除を行った。すると2号に通信が来たようで話し込んでいた。
「あ、3号。ヘリが予定より早く到着するってさ。そろそろ帰れるって〜。」
2号は油断したように大きく伸びをしていた。全く呑気なものだ。
『例えどんな死でも、黙って耳を塞いでいるような愚劣はしません。』
その言葉が脳裏に過ぎる。まるで、自分に対しての攻撃かと思うほどぐさりと刺さる言葉だった。
「2号、人の死に目をそらすって愚かな行為…なのかな。そんなに愚劣なこと…なのかな…。」
2号は少し驚いた表情を見せたが、眉を緩めた。硬い表情とは違い、口許が少し緩んだ。
「これは、自分へのけじめみたいなものだよ。わざわざ他人にまで押し付けるようなことはしないよ。」
過去に戦場に縛られていたいなどと言ったそうだが、それとなにか関係があるのだろうか。
2号は。本当は戦場に縛られて”居たい”わけでは無いのではないか。2号自体が謎なんだ。
「けじめ?」
「私は、戦場にしばられて”いたい”から。そのためのせめてもの贖罪とけじめ。」
その時、目に入ったのは2号の耳にぶら下がっている見覚えのあるピアスだった。
3号は下を向いて俯いた。だが、少し経った後にはっと制御室から出て屋上へと足を急がせる。
屋上についたと同時にヘリが止まる。また、無人機なんだろうが。
ヘリに乗車すると帰りとは違う道でヘリは運行した。あの激戦区は、制空権は警戒態勢をとっているだろう。妥当な判断だ。
攻撃を受け、学習したのだろう。さっきの話をしてから3号は更に、悲愴に満ちたような顔をした。
終始暗い顔をしているし、なんだかんだ3号は顔に出やすいのだろう。鈍感な私でも分かるくらいに。
席は少し離れていたが、ここはコミュニケーションを取るためにも頑張るしかない。これは少しグイグイしないと仲良くなれないタイプだ、多分!
2号は席を立ち上がり3号の隣に座る。3号の困惑の顔を無視して2号は手をグーにする。
「ジャンケンしない?」
「…なんで?」
3号はポカンとした顔を浮かべる。意外な行動に驚きを隠せないのだろう。多分ジャンケン作戦失敗した。どうしよう、かえって気まずくなった。
「3号って…、3号って…、痩せてるけど栄養取れてる?」
「あの…、さっきから大丈夫ですか?」
「コミュニケーション…、難しい…。」
3号がさっきからドン引きされてばっかじゃないですか。どうしよう、3号絶対引いてる。
「えっと…、3号少し細いな〜と思って…。あとっ…、包帯の傷どうしたのかなぁ〜…って。 」
3号はため息混じりのあいずちをうって疑問を顔に浮かべていた。やっぱり3号はなに考えてるのかわからないけど向こうもそう思ってるよねー。
「細いのは、ただ食べると気持ち悪くなるから。包帯の傷は前々からある。何をしても治らなかった。」
核体兵器は心に残っている傷ほど治るのが遅かったりする。よく見れば頭や顔だけじゃなく手首にもその包帯が巻かれている。3号は、私には想像できないほどの傷を何回も負っているのか。
「2号は今いくつなの?」
「18!あとちょっとで退役なんだよね!」
興味を示してくれたのか質問をしてくれた。正直退役前に課せられる任務は死亡率が高いから生き残るなんて、思っちゃいない。
「3号は退役したら何したい?私は───」
3号が急に私の口許を手で塞いできた。反射的なのか頬に汗が滲む。
「その話は、しないでください…。 」
そんなに聞きたくない話なのかな。3号めっちゃ焦ってたし、退役するのが嫌なのかな。
私も正直実感もないし退役なんてしたら居場所は無くなるなと思う。
[到着]
そんなログが入るとヘリは降下し始めた。窓をみて私は慌ててカーテンを閉める。
「3号、少し待っててくれる?」
「どうしたんだ?なにか問題が…?」
「いいから、2分後にここを出て。」
3号が黙って頷くのを見ると降下を終え停留したヘリを降りる。そこには手や足がドッキングしたようなよく分からない生物が居た。隣には研究者。
これは間違いなく、実験失敗作だろう。なんの害もないが廃棄処分しないと費用がかさむだけだ。
「2号、おかえりなさい。どうしましたか?」
「それは処分する。」
いいですよと言われたのを合図にその人だったものを真ん中から切断する。グチャという音とともにそのモノは倒れ込んだ。
「さっさと処理して。」
その音を聞きつけた3号がヘリから降りるが、3号の細い腕を掴み建物の中へ引っ張る。
さっきの死体の正体を3号に見抜かれる前にさっさとこの場から離れないとだ。
汚れ仕事は私が全て引き受ける。あの子の魂は、弔われることなく消えるのだわろう。
2号は3号の手を強く握る。3号はぼんやりとあの血溜まりを見たあとに2号の顔を見た。