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りょん.
52,782
夜。
片付けが終わりきらない部屋で、
若井はもう一度遺書を開いていた。
「……」
静かな空気の中、
紙をめくる音だけが響く。
そこに書かれていたのは、
苦しみじゃなかった。
痛みでも、
恨みでも、
“なんで自分だけ”でもない。
ただ、
優しい言葉ばかりだった。
『若井へ
いっぱい話聞いてくれてありがとう』
『元貴へ
無理しすぎないでね』
『2人と音楽できて、本当に幸せでした』
「……」
若井の喉が詰まる。
何回読んでも、
どこにも“辛い”が書いてない。
『若井のギター安心した』
『元貴の歌、ずっと好きでした』
そんなことばっかり。
「……なんで」
「……なんで苦しいとか書かないんだよ」
本当は怖かったはずだ。
苦しかったはずだ。
眠れない夜も、
息ができない日もあったのに。
でも涼ちゃんは最後まで、
自分の痛みより、
2人へ残す言葉を選んでいた。
「……」
元貴は遺書の最後を見る。
そこには、
少し震えた字でこう書かれていた。
『最後まで普通でいたくてごめん』
「……っ」
元貴の目から涙が落ちる。
“普通でいたかった”
その一言に、
涼ちゃんがどれだけ必死だったか全部詰まっていた。
コメント
4件
りょん.さん、読ませていただきました。 涼ちゃんの遺書、苦しみが一切書かれていなくて、優しい言葉ばかりなのが逆に胸に刺さりました。『普通でいたくてごめん』——この一文に、どれだけの葛藤があったんだろうって思うと涙が止まらなくなりました。自分の痛みより仲間への想いを選んだ涼ちゃんの優しさが、静かに、でも確かに届く回でした。