テラーノベル
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クライマックスの連続花火が夜空を覆った。金色の光が雨のように降り注ぎ、海は輝きに満ちた。
美咲はもう涙を隠さなかった。
遥斗も何かを言いかけたが、その声は花火の轟音にかき消された。
やがて、最後の一発が夜空に大輪を描き、静かに散っていった。
港町は再び夜の暗さを取り戻す。
「……また、会えるかな」
「わかんない。でも、今日のことは、忘れない」
別れの言葉は、それだけだった。
遥斗の背中が人混みに消えていく。
美咲は濡れた頬のまま、空を見上げた。
そこには、煙の残り香と、ほんの少しだけ光る星があった。
まるで、花火の余韻みたいに――。
──夏は終わる。でも、この涙は、まだ温かい。
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