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お兄ちゃんは『妹が!』心配です

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お兄ちゃんは『妹が!』心配です

75 - 第75話 〜お兄ちゃんは持論という名のお説教をするようです〜

2024年10月22日

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「先程は大変失礼を……」
あれから十数分が経った。泣き止んだシラギクは、先程の醜態などなかったかのように、咳払いをする。


しかし、シラギクの本性を知った俺や伊織……そしてロキは、軽蔑の眼差しでシラギクを見た。




「な、なんですか、その目は……! ちょっと覗いたくらいで……!」


「覗いてる時点で、立派な犯罪なんだが?」




俺の言葉に、シラギクは顔を逸らす。




「べ、別に……男性なんだし、裸を少し見るくらいいいじゃないですか……」




シラギクの一言に、俺はため息をつく。




「あのなぁ……『男の裸だから覗いてもいい』とか、『女の裸だから覗いちゃダメ』とか、そういう問題じゃないのよ? そもそも『』なんだわ。誰だって他人に裸じゃなくても、プライベートを覗かれるのは嫌だろ? アンタがやってるのは、セクハラとかそんな優しいもんじゃないのよ? その意味がお分かり?」


「で、でも! 巷では、女性に色々と酷いことする男性がいるじゃないですか! だから少しくらい、女性側が男性に仕返ししても……」




シラギクの謎の開き直りの反論に、俺の中の何かがキレた音がした。




「でもそれ、アナタの意見ですよね……?」




思わず笑みがこぼれて切り込む。……もちろん、いい意味の笑顔ではない。




「……てかそれさ、……よな?」


「あ、ヒロくんがキレた」




そう呟く妹の言葉が、聞こえた気がする。


だが俺は気にせず、笑顔のままシラギクに己の意見をぶつけることにした。




「アンタさ……そこへ直れ!!」


「ヒッ……!?」




俺の一言で、シラギクが操り人形のようにその場で正座をする。




「……? …………!?」


「あー……」




困惑するシラギクとは裏腹に、ロキが苦虫を噛み潰したような表情で俺たちを見ている。




「うんうん、もしここで『フェミニズム』どうこうの話をするなら、『マスキュリズム』ってのも一緒に学ぼうか? あれも右と左があるらしいからな……あ、もちろん『男性中心主義』では無い方のな? まぁ女も大変だろうが、男だって色々と大変なのよ? 男だって『出世して高い給料を貰え』とか『大黒柱として家庭を支えろ』とか……まぁこれは男の中でも高学歴・陽キャ等などのカースト上位に入れなかった、哀れな社畜と化した俺みたいな底辺ヤローが主に言われるがなー」


「自虐ネタ乙」




俺の自虐ネタに妹が冷静にツッコむが、気にしない。




「『男なら力仕事をしろ』とか『男らしくあれ』とか……別に男だってオトメチックなことや、メルヘンチックなこと考えてもいいだろ……! そもそも女は少年漫画読んでも何も言われないのに、男が少女漫画を読むと『キモ……』って言われるのはどうなんだよ! 男だってたまには少女漫画を読んで『胸きゅん♡』したいし、恋バナしたい時だってあるだろ!?」


「ヒロくん、ヒロくん。私情がはいってる。……てか、ヒロくん。ヒロくんって、恋バナとか興味あったの?」


「いや全く。これっぽっちも」




妹の質問に、俺は真顔で答える。


むしろ俺はリア充化したダチから惚気話を聞かされる度に、内心『このリア充め、末永く爆発しろ』とさえ思っていた。




「ちょっと話が逸れたが……別に俺は『男尊女卑』を謳うわけでも、『女尊男卑』を謳うわけでもねぇ……どちらの性別にしても、大変なこともあれば、それ故に得することもそれぞれある。生まれながらの地位や立場、環境でもそれはもちろん変わってくる。……だがそれを理解せずに『自分は〜』だの、『性別が〜』だの語るなんざおこがましいんだよ。この世界の社会制度や仕組みは知らないが、アンタの言う周りだか巷だかで聞きかじって知った情報だろうが、自分で体験してないのならそれは一部のクソッタレがやった事で、そもそも普通の常識のあるヤツはやらねーよ。その一部の頭おかしいクソッタレのせいで、『これだから男は〜』って一纏めにされるのもガチで不快、超不愉快。それにそういうのは被害を受けた側が言ったりやったりしていいことであって、第三者の無関係なアンタが自己の判断で報復や鉄槌を下してもいい理由にはならない。そもそもアンタがやってる事はただの性癖が歪んだ犯罪的趣味で、口では正義と言って合法性を振りかざそうとしてるただの悪だ。そのせいでまた『これだから女は〜』とか言われんの、分かる? アンタのその言動一つで、『これだから民度の低いやつは……』とか言われて周りの評価も一緒に下がるの。その意味がおわかり? まずは自分で情報を集めて、視野を広げ、事実関係を明らかにする。たった一部の……しかも見ず知らずの他人の言葉に踊らされてその偏見的な意見を鵜呑みにするようなら、最初からそういった話を拾ってくるな。てか、そもそも別の話題にすり替えて本題である自分の性癖を正当化させるような、卑怯な手を使って来るならはなからそういったことをやるな。正々堂々と他人に言えないような、他人に迷惑をかけるようなことをするな。そんなことも分からないなら、まず常識というものを学んでから出直してこい。話はそれからだ、以上!」




俺は私情と私怨の入り交じった自論を、思いっきりシラギクにぶつけた。




「ヒロくんのどちゃクソ重ド正論パンチ、えっぐ……」


「ヤヒロさん、相当怒ってますね……」




妹と伊織が、俺の背後でそう会話している。




「まぁーヒロくんって、こういう曲がったこととか、『男だから〜』や『女だから〜』の一言で片付けたりする偏見が嫌いだからねぇー」




さすが我が妹よ、兄のことをよく分かってるジャーマイカ。




「お前ら、やっぱり似た者兄妹だな……」




ロキが小さく、ため息混じりにそう呟く声が聞こえる。おいおい、失礼だなロキっつぁーん。俺と妹のどこが似た者兄妹に見えるんだい?




俺がそう思っていると、シラギクが俯きながらなにか決意をしたように拳を握っている。




「分かりました……黒髪の変な服の人相の悪いお兄さん……」


「アンタしれっと喧嘩売ってんのか?」




シラギクのドストレートに失礼な言葉に、俺は反射的にツッコむ。




「つまり、なんの後ろめたさもなく正々堂々といいんですね……!!」




なにか吹っ切れたように、清々しくガッツポーズをしながらシラギクがそう答える。




一方、俺たちはと言うと……俺の説教という名の自論から、どこをどうしてその考えにたどり着いたのだろうか……。シラギクのその言葉に、この場にいる全員が内心で「違う、そうじゃない」と思ったことだろう。


俺は一度俯いてはしゃがんで、シラギクと視線を合わせる。




そしてニッコリと笑って、シラギクの肩に手を乗せる。




「…………とりあえず、当分の間はそのまま反省しとこっか……な?」




そう言って、肩に置いた手に少し力を入れる。




「ぴぎゃ……!!」








こうしてシラギクは、俺たち……主に、男性陣の冷ややかな視線を浴びながら、三十分ほど正座させられたのだった。

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