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自転車和尚
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#イケメン
高遠すばる
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#初小説
鬼卍。
70
私はエルデン王立魔法学園の講堂で、お兄様と並んで舞台に立っていた。
その隣にはレオポルド様、アリス様、ジュリアン会長がいる。私達の前には、学年ごとに席を分けた生徒達がずらりと座っていた。
演壇には、学園長のベアトリス・ウィクリフが立っていた。銀白色の髪を高く結い上げ、炭灰色の長衣を着ている。銀縁の眼鏡越しに私達五人を一人ずつ確かめてから、客席へ向き直った。
「先日の襲撃で、皆さんはこの講堂へ避難しました。ですが、外で敵を食い止めた者がいなければ、ここも安全ではありませんでした」
あの日、私達は傭兵達と戦った。講堂へ来るのが、こんな晴れがましい機会になるとは思っていなかった。
「アーサー・アシュフォード、マチルダ・アシュフォード、レオポルド・ハワード、アリス・ヨーク。この四人は自ら迎撃に出て、灰狼傭兵団を撃退しました。そしてジュリアン・ペンブルックは敵の接近をいち早く察知し、知らせました。この通報によって、私達は避難の時間を得たのです」
ジュリアン会長が礼をした。会長が最初に襲撃を告げた時のことを思い出す。戦うのは苦手だと言っていたけれど、あの時は誰より早く危険を察知していた。
「五人の勇気と行動を称え、エルデン王立魔法学園の銀獅子賞を贈ります。学園と、ここに集う者達を守った功績の証です。誇りを持って受け取ってください」
学園長が演壇を離れると、教員が脇の台から記念盾を取り上げた。両手に収まる大きさの木の盾に、前脚を高く掲げた獅子の銀細工が付いている。その下の銀板には、学園の名と受賞者の名が刻まれていた。台には同じ形の盾が五人分、並べられている。
「アーサー・アシュフォード。前へ出てください」
「はい」
お兄様が一歩進み、礼をした。学園長は教員から受け取った記念盾を、お兄様へ差し出した。
「よく学園を守ってくれました」
「ありがとうございます」
お兄様は両手で盾を受け取り、もう一度礼をした。今日はいつもより少し硬い表情をしている。私は拍手をしながら、お兄様がいただいた銀の獅子を見つめた。
「マチルダ・アシュフォード」
自分の名を呼ばれ、慌てて拍手をやめた。一歩前へ出て礼をすると、学園長が次の記念盾を差し出してくださった。
「仲間と共に、よく戦いましたね」
「光栄に存じます」
両手で受け取ると、思ったより重かった。銀板には、確かに私の名がある。私は盾を胸に抱えて、お兄様の隣へ戻った。お兄様と同じ賞をいただいたのだ。早くお父様とお母様にお見せしたかった。
次に呼ばれたレオポルド様は、記念盾を受け取ると深く一礼した。アリス様は堂々と前へ進み、授与された盾を客席へ見えるように持って、私達の隣へ戻った。
最後はジュリアン会長だった。
「あなたの通報がなければ、避難は間に合いませんでした。的確な判断でしたね」
「ありがとうございます」
会長は両手で記念盾を受け取り、礼をした。私達の隣へ戻っても、何度もご自分の名を確かめていた。
拍手が起きた。前の列から後ろまで、生徒達が私達を見て手を叩いている。
私も四人と共に頭を下げた。顔を上げると、お兄様がこちらへ微笑んでくださったので、緊張していたことを今更思い出した。
拍手が収まるのを待って、学園長は演説を続けた。
「貴族は平民より高い魔力を持ちます。この学園で魔法を学ぶ皆さんは、生徒であっても、平民の警備員より強い。その力を持つ貴族には、平民を守る義務があります」
舞台の端に控える警備員達へ、学園長が目を向けた。
「敵が来た時、自分達より力の弱い警備員に戦いを任せ、守られるのを待っていては、その義務を果たせません。自らの力で平民を守ってこそ、貴族である意味があるのです」
レオポルド様は姿勢を正したまま、演説を聞いていた。
「今回の五人は、それぞれの力を尽くして襲撃に立ち向かい、自分達と共に、警備員や学園で働く平民を守りました。この自治自衛の行動は、貴族としての義務を果たすものです。私は学園長として、その行動を称賛します」
今度の拍手には、歓声も交じった。アリス様は堂々と客席を見渡し、ジュリアン会長は照れたように微笑んだ。
お兄様へ拍手を送る生徒達の中には、婚約破棄の夜に私達を遠巻きに眺めていた顔もあった。私は胸を張って、もう一度礼をした。
式が終わり、私達は舞台の脇から講堂の出口へ向かった。出口へ進む生徒達から、お礼やお祝いの言葉をかけられる。
お兄様も一人ずつ丁寧に答えていたが、人が途切れると講堂の中を振り返った。
「殿下は、今日も来ていないんだな」
「マーガレット様もいらっしゃいませんでしたね」
王族用の席は、式の間ずっと空いていた。二人とも授業に出ていない。私も知っていたが、顔を合わせずに済むことを、少しありがたいと思っていた。
「襲撃の日から休んで、表彰式にも出ない。二人ともというのが気になる」
お兄様は出口を見た。けれど、そこに殿下が現れることはなかった。
「皆、今夜は空いている?」
待っていてくださったアリス様が、私達へ声をかけた。
「父がお祝いをしたいと言っているの。うちへ来ない? もちろん、レオポルド先輩とジュリアン会長も」
「公爵家のお招きなら、喜んで伺うよ」
ジュリアン会長が答え、レオポルド様も頷いた。
「俺も伺おう。父上に礼を伝えてくれ」
「お兄様、私達もよろしいですか」
「ああ。マチルダ、二人で伺おう」
「待っているわ。今日はアーサー君の話ばかりで終わらせないでね」
アリス様は私の手を取って、嬉しそうに笑う。公爵邸でのお祝い。何を着ていけばよいのか考え始めた。
コメント
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お兄様と一緒に銀獅子賞を受け取る姿、本当に誇らしかったです。マチルダが「お兄様と同じ賞」と嬉しそうに胸に抱える場面で、思わずこちらも笑顔になりました。ジュリアン会長が何度も自分の名を確かめる仕草も愛らしくて、五人の連帯感が伝わってくる表彰式でした。王族席が空いていた伏線も気になります…次が待ち遠しいです!